パートでも福利厚生は使える?社会保険・有給の条件と待遇差の判断基準とは
「パートだから福利厚生はない」と思っていませんか?
実は、一定の条件を満たせばパートでも社会保険や有給休暇などの福利厚生を利用できます。
同一労働同一賃金の考え方により、通勤手当や食事補助なども、雇用形態だけを理由に差をつけることは原則できません。
この記事では、福利厚生 パートの利用条件から具体的な種類、正社員との待遇差の判断基準まで、確認すべきポイントを順に解説します。
パートでも福利厚生は使える!利用できる条件

パートタイム労働者でも、一定の条件を満たせば正社員と同じように福利厚生を利用できます。
法律の改正により、雇用形態による不合理な待遇差は禁止されており、パートで働く方も社会保険や各種手当を受ける権利があります。
法定福利厚生と法定外福利厚生の違い
福利厚生は大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類に分かれます。
それぞれの特徴を理解することで、自分が利用できる制度を正確に把握できます。
法定福利厚生
法定福利厚生とは、法律で企業に義務付けられている福利厚生制度です。
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険などの社会保険が該当します。
条件を満たす労働者に対して、企業は必ず加入させなければなりません。
法定外福利厚生
一方、法定外福利厚生は企業が独自に設ける任意の制度です。
通勤手当、住宅手当、食事補助、慶弔休暇、予防接種補助などが含まれます。
これらは企業の判断で設けられるため、会社によって内容や適用範囲が異なります。
パートタイム労働法では、正社員と同じ業務内容・責任範囲であれば、雇用形態に関わらず同等の待遇を受ける権利があると定められています。
法定福利厚生は要件を満たせば必ず適用され、法定外福利厚生についても不合理な差別は認められません。
パート・アルバイトが福利厚生を利用するための条件
パート・アルバイトの方が福利厚生を利用するには、主に労働時間と雇用期間の2つの要素が関わります。
それぞれの適用条件が異なるため、自分の働き方と照らし合わせて確認しましょう。
社会保険
社会保険の加入条件は、週の所定労働時間と月の所定労働日数が正社員の4分の3以上の場合です。
例えば、正社員の週40時間勤務に対して、週30時間以上働いていれば対象となります。
従業員数101人以上の企業では、週20時間以上勤務など一定の要件を満たせば加入できる短時間労働者への適用拡大が進んでいます。
雇用保険
雇用保険は、週20時間以上の勤務かつ31日以上の雇用見込みがある場合に加入対象です。
労災保険はすべての労働者に適用されるため、勤務時間に関わらずパート・アルバイトでも対象となります。
年次有給休暇は、雇用開始から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に付与されます。
週の所定労働時間が30時間未満でも、勤務日数に応じて比例付与されるため、パートタイム労働者も取得可能です。
| 福利厚生の種類 | 主な適用条件 |
|---|---|
| 健康保険・厚生年金 | 週の所定労働時間が正社員の4分の3以上、または短時間労働者の適用拡大要件を満たす場合 |
| 雇用保険 | 週20時間以上勤務、かつ31日以上の雇用見込み |
| 労災保険 | すべての労働者(勤務時間不問) |
| 年次有給休暇 | 6か月継続勤務、全労働日の8割以上出勤 |
| 育児休業・介護休業 | 雇用期間1年以上など一定の要件 |
同一労働同一賃金で変わった適用ルール
2020年4月から施行された同一労働同一賃金により、有期雇用労働者やパートタイム労働者への福利厚生の適用ルールが大きく変わりました。
この制度改正は、非正規雇用の待遇格差を是正し、公正な処遇を実現することを目的としています。
同一労働同一賃金では、職務内容や責任の程度、配置の変更範囲が同じであれば、雇用形態による待遇差を設けてはならないと定められています。
これは賃金だけでなく、福利厚生についても同様の考え方が適用されるのです。
具体的には、通勤手当や食事補助など業務遂行に必要な費用については、正社員とパートで差を設けることは原則として不合理とされます。
慶弔休暇や健康診断なども、同じ条件で働く労働者には同等に提供すべきとされています。
ただし、職務内容や責任の範囲が異なる場合や、将来的な配置転換の有無などによって待遇に差を設けることは認められます。
重要なのは、その差が合理的な理由に基づいているかどうかです。
企業は待遇差の理由を説明する義務があり、労働者から求めがあれば文書で回答しなければなりません。
パートが利用できる福利厚生の種類一覧

パートタイム労働者が実際に利用できる福利厚生は多岐にわたります。
法定福利厚生と法定外福利厚生それぞれについて、具体的な内容と利用のポイントを見ていきましょう。
社会保険・雇用保険(法定福利厚生)
法定福利厚生の中核となるのが各種社会保険です。
パート・アルバイトでも条件を満たせば必ず加入でき、生活の安定と将来の備えに重要な役割を果たします。
健康保険
健康保険は、病気やケガの際に医療費の一部を保険が負担する制度です。
パートでも加入すれば、医療機関での自己負担が原則3割となり、高額療養費制度も利用できます。
扶養家族がいる場合は、その家族も被扶養者として保険の対象となります。
厚生年金
厚生年金は、将来の老齢年金に加えて、障害年金や遺族年金の保障も受けられる制度です。
加入期間に応じて将来受け取る年金額が増えるため、長期的な生活設計において重要な意味を持ちます。
国民年金のみの場合と比べて、受給額が大幅に増加する可能性があります。
雇用保険
雇用保険に加入すると、失業時に失業給付を受けられるほか、育児休業給付金や介護休業給付金、教育訓練給付金なども利用できます。
週20時間以上働くパートタイム労働者の多くが対象となるため、加入状況を確認しておきましょう。
労災保険
労災保険はすべての労働者に適用され、業務中や通勤中の事故・病気に対して治療費や休業補償が支給されます。
パート・アルバイトであっても、勤務時間に関わらず保護の対象です。
住宅手当・交通費・食事補助(法定外福利厚生)
法定外福利厚生は企業が独自に設ける制度ですが、同一労働同一賃金の考え方により、パートタイム労働者への適用範囲が広がっています。
通勤手当
通勤手当は、業務遂行のために必要な費用として、正社員と同じ支給基準を適用することが求められる代表的な手当です。
多くの企業では、雇用形態に関わらず実費相当額を支給しています。
定期代の全額支給や上限額の設定など、会社の規定を確認しましょう。
食事補助
食事補助については、社員食堂の利用や食事券の支給などがあります。
同じ事業所で働くすべての従業員に提供される場合、パートタイム労働者を除外することは不合理な待遇差と判断される可能性があります。
その他手当
住宅手当や家族手当については、企業の人材確保戦略や福利厚生の目的によって取り扱いが異なります。
転勤の可能性がある正社員のみに支給する場合など、合理的な理由があれば差を設けることも認められますが、同じ条件で働く場合は同等の支給が求められます。
慶弔休暇、予防接種補助、健康診断なども、業務に従事するすべての労働者の福祉向上を目的とする場合、パートタイム労働者にも提供すべきとされています。
自社の就業規則や福利厚生規程を確認し、利用できる制度を把握しておくことが大切です。
正社員との待遇差は不合理?判断基準と確認すべきポイント

福利厚生において正社員とパートで待遇差がある場合、それが合理的かどうかを判断する基準があります。
不合理な待遇差に気づいたときの対応方法も含めて理解しておきましょう。
不合理な待遇差に該当するケース例
同一労働同一賃金に関する法律やガイドラインでは、不合理な待遇差の具体例が示されています。
これらを参考に、自分の職場の状況を確認できます。
通勤手当が支給されない
通勤手当について、正社員には全額支給されるのにパートには支給されない場合、業務遂行に必要な費用であることから不合理な待遇差と判断される可能性が高いです。
通勤という行為は雇用形態に関わらず発生するため、同じ基準で支給すべきとされています。
社員食堂を使えるのは正社員だけ
食堂の利用について、同じ事業所で働きながらパートタイム労働者だけが利用できない場合も、不合理な待遇差に該当する可能性があります。
労働生産性の向上や従業員満足の観点から提供される福利厚生は、すべての従業員に平等に提供されるべきです。
慶弔休暇は欠勤扱いになる
慶弔休暇や病気休暇についても、同じ職場で働く労働者として同等の権利が認められます。
家族の不幸や本人の病気は雇用形態に関係なく発生するため、これらの休暇制度に差を設けることは原則として不合理です。
会社が加入している福利厚生サービスが利用できない
福利厚生施設の利用についても同様です。
社員寮や保養所、スポーツ施設などを正社員のみに限定することは、合理的な理由がなければ不合理な待遇差となります。
ただし、転勤者向けの社員寮など、特定の目的がある場合は例外となることがあります。
合理的な待遇差が認められるケース
とは言え、すべての待遇差が不合理というわけではありません。
労働時間や業務内容、責任の範囲などによって、合理的な待遇差が認められるケースもあります。
どんな場合に合理的と認められるか見ていきましょう。
所定労働時間が短い
所定労働時間が短いパートタイム労働者に対して、福利厚生を時間比例で提供することは合理的とされる場合があります。
例えば、週5日勤務の正社員と週3日勤務のパートでは、食事補助の回数に差が出ることは自然です。
業務内容や責任の程度が明確に異なる
業務内容や責任の程度が明確に異なる場合、一部の手当に差を設けることも認められます。
管理職手当や役職手当など、特定の役割や責任に対する対価として支給される手当は、その役割を担っていない労働者には支給されなくても不合理ではありません。
配置転換や転勤の有無
将来的な配置転換の可能性や転勤の有無も、待遇差の合理性を判断する要素となります。
全国転勤がある正社員と勤務地限定のパートでは、住宅手当の支給基準に差があっても合理的と判断されることがあります。
重要なのは、待遇差に明確な理由があり、その理由が客観的に説明できるかどうかです。
企業は待遇差の理由を労働者に説明する義務があるため、疑問に感じた場合は積極的に質問しましょう。
会社に確認したいときの質問例と相談先

福利厚生について疑問や不明点がある場合、適切な方法で確認することが大切です。
円滑なコミュニケーションのための質問方法と、必要に応じて利用できる外部の相談窓口を紹介します。
人事・総務への聞き方
社内で福利厚生について確認する際は、具体的かつ丁寧な聞き方を心がけましょう。
適切な質問方法により、必要な情報を得やすくなります。
まず、自分の雇用形態で利用できる福利厚生の全体像を把握したい場合は、「パートタイム従業員が利用できる福利厚生制度について、一覧や資料をいただけますでしょうか」と尋ねると良いでしょう。
就業規則や福利厚生規程の該当部分を教えてもらえる可能性があります。
特定の福利厚生について詳しく知りたい場合は、「通勤手当の支給基準について確認させてください。パートタイム従業員の場合、どのような条件で支給されますか」のように、具体的な項目を挙げて質問します。
正社員との待遇差について疑問がある場合は、感情的にならず事実確認として質問する姿勢が重要です。
「正社員の方には◯◯が支給されているようですが、パートタイム従業員への適用について教えていただけますか」といった聞き方が適切です。
社会保険の加入条件については、「現在の勤務時間で社会保険に加入できるか確認させてください。加入要件と手続きについて教えていただけますでしょうか」と尋ねましょう。
自分の労働条件と照らし合わせて確認できます。
外部の相談窓口(労働局・社労士)
社内での確認だけでは解決しない場合や、待遇差が不合理ではないかと感じる場合は、外部の専門機関に相談できます。
都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」では、同一労働同一賃金に関する相談を受け付けています。
パートタイム労働法や労働契約法に基づく待遇差の相談ができ、必要に応じて企業への助言や指導も行われます。相談は無料で、匿名でも可能です。
また、労働基準監督署では、労働条件全般についての相談ができます。
社会保険の加入漏れや労働時間の管理、年次有給休暇の取得など、法律で定められた権利に関する相談に対応しています。
社会保険労務士は、労働・社会保険の専門家として個別の相談に応じています。
自分の状況に合わせた具体的なアドバイスを得られるため、複雑なケースでは専門家への相談も検討しましょう。初回相談が無料の事務所も多くあります。
また、厚生労働省の「働き方改革特設サイト」では、同一労働同一賃金に関する詳しい情報やガイドラインが公開されています。自分で情報を調べる際の参考資料として活用できます。
まとめ

疑問や不明点がある場合は、まず人事・総務部門に具体的に質問してみましょう。
社内での解決が難しい場合は、労働局や社会保険労務士など外部の専門機関に相談できます。
自分の権利を正しく理解し、適切に活用することで、より良い労働環境とワークライフバランスの実現につながります。
