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福利厚生としての現金支給はどこまでOK?手当・祝い金・見舞金などの扱い

福利厚生としての現金支給はどこまでOK?手当・祝い金・見舞金などの扱い
ふくラボ編集部

福利厚生として現金を支給したいけれど、給与扱いになって課税対象になるのでは?と不安を感じる担当者の方は多いでしょう。

実は現金支給の多くは給与と判定され、所得税や社会保険料の対象になるため、福利厚生費として認められる条件を正しく理解することが重要です。

本記事では、福利厚生の現金支給における税務上の判断基準や、祝い金・見舞金・各種手当の扱いについて具体的に解説します。

この記事で分かること
  • 福利厚生費として認められる現金支給の条件と、給与扱いになるケースの違い
  • 祝い金や見舞金など、現金支給でも福利厚生費として認められやすい具体例
  • 通勤手当・住宅手当・食事手当など各種手当の税務上の扱いと非課税要件
  • 現金以外で従業員満足度を高める福利厚生の導入方法

福利厚生の現金支給、どこまでがOKでどこからがNG?

福利厚生の現金支給、どこまでがOKでどこからがNG?

福利厚生として現金を支給する際、最も重要なのは「給与」と判定されるかどうかです。

給与扱いになると課税対象となり、従業員の手取りが減るだけでなく、会社側も社会保険料の負担が増えます。

一般的に、現金支給は給与と判定されやすく、福利厚生費として認められるケースは限定的です。

税務署の判断基準を理解し、適切に運用することが求められます。

福利厚生費として認められる現金支給の条件

現金支給を福利厚生費として認めてもらうには、以下の条件を満たす必要があります。

条件 具体的な内容
支給目的の明確性 慶弔見舞金など、社会通念上妥当な理由と目的があること
金額の妥当性 世間相場や社会通念に照らして常識的な範囲内であること
全従業員への平等性 特定の従業員だけでなく、一定の条件を満たす全員が対象であること
就業規則への明記 支給基準や金額が就業規則や社内規程に明確に定められていること
労働の対価ではないこと 勤務成績や業務実績に連動しない、純粋な福利目的であること

これらの条件を満たさない現金支給は、税務調査で給与と判定されるリスクが高くなります

特に金額の妥当性については、結婚祝い金なら3万円〜5万円程度、出産祝い金なら1万円〜3万円程度が一般的な相場とされています。

給与扱いになってしまうとどうなる?

現金支給が給与と判定された場合、以下のような影響が発生します。

  • 所得税の源泉徴収が必要になり、従業員の手取り額が減少する
  • 社会保険料(健康保険・厚生年金)の算定基礎に含まれ、労使双方の負担が増える
  • 住民税の課税対象となり、翌年の税負担が増加する
  • 過去に遡って修正が必要になった場合、追徴課税や延滞税が発生する可能性がある

特に問題となるのは、福利厚生費として処理していたものが給与と判定されると、過去に遡って源泉徴収義務が発生する点です。

会社側は本来徴収すべきだった所得税を納付する義務を負い、従業員側も確定申告の修正が必要になる場合があります。

どこから給与?福利厚生費との分かれ目

どこから給与?福利厚生費との分かれ目

福利厚生費と給与の境界線は、税務上の判断が難しい領域です。

最も重要な判断基準は「労働の対価かどうか」という点になります。

給与と判定される主な特徴は以下の通りです。

判定ポイント 給与扱いになりやすいケース 福利厚生費として認められやすいケース
支給の性質 労働の対価、勤務に対する報酬 従業員の福祉向上、慶弔見舞の目的
支給の定期性 毎月定額で支給される 特定のイベント時のみ支給される
金額の決定方法 職位や勤務成績で変動する 全従業員に一律または社会通念上の相場
受給の選択性 受け取りを拒否できない 任意または条件該当者のみ

例えば「営業手当」「役職手当」「家族手当」などは、名称に「手当」とついていても、実質的には労働の対価として支給されるため給与扱いになります。

一方、結婚祝い金や災害見舞金のように、特定の事由が発生した際に一時的に支給される現金は福利厚生費として認められる可能性が高くなります

また、現金ではなく現物給付(社員食堂、社宅、健康診断など)の場合は、一定の要件を満たせば非課税となるケースが多いため、福利厚生としての効果を高めやすい特徴があります。

現金支給でも通りやすい例

現金支給でも通りやすい例

現金支給の中でも、社会通念上の慶弔見舞金は福利厚生費として認められやすい傾向にあります。

ただし、金額の妥当性や支給基準の明確さが重要になります。

祝い金(結婚・出産)

結婚祝い金や出産祝い金は、従業員の人生における慶事を祝福する目的で支給されるため、社会通念上相当な金額であれば非課税として扱われます

祝い金を福利厚生費として適切に運用するためのポイントは以下の通りです。

  • 就業規則や福利厚生規程に支給基準と金額を明記する
  • 結婚祝い金は3万円〜5万円程度、出産祝い金は1万円〜3万円程度が一般的な相場
  • 正社員・契約社員・パートなど、雇用形態による差をつける場合は基準を明確にする
  • 支給申請時に証明書類(婚姻届受理証明書、母子手帳のコピーなど)の提出を求める
  • 支給記録を適切に保管し、税務調査に備える

注意点として、金額が社会通念上相当と認められる範囲を超えると、超過分は給与として課税される可能性があります。

例えば結婚祝い金として10万円を支給した場合、5万円を超える部分は給与扱いになるリスクがあります。

見舞金(傷病・災害)

傷病見舞金や災害見舞金は、従業員やその家族が不測の事態に見舞われた際に支給されるもので、福利厚生費として認められやすい現金支給の代表例です。

見舞金の種類 一般的な相場 非課税として認められる条件
傷病見舞金 1万円〜5万円程度 入院や療養の事実があり、社会通念上相当な金額
災害見舞金 3万円〜10万円程度 火災・地震などの被災事実があり、被害状況に応じた金額
弔慰金(死亡) 5万円〜10万円程度 業務外の死亡で、遺族への慰謝の意味合いが明確
香典 5千円〜1万円程度 社会通念上の常識的な範囲内

見舞金を適切に運用するためには、支給事由の明確化が重要です。

例えば傷病見舞金の場合、「入院期間が1週間以上」「手術を伴う治療」など、具体的な支給条件を規程に定めることで、恣意的な支給を防ぎ、税務上の信頼性を高められます。

また、災害見舞金については被害状況に応じて金額を段階的に設定することが一般的です。

全壊・半壊・一部損壊など、被害の程度によって支給額を変えることで、実態に即した合理的な支給基準として認められやすくなります

「○○手当」は給与としてカウントされる?

「○○手当」は給与としてカウントされる?

名称に「手当」とついているものでも、基本的に給与の一部として扱われ、課税対象になるケースが多くなります。

ただし、一定の条件を満たせば非課税となる手当もあります。

よく使われる代表的な手当についてそれぞれ見ていきましょう。

通勤手当

通勤手当は、従業員が通勤するために必要な交通費を補助するもので、一定の限度額までは非課税として認められています

通勤手当の非課税限度額は通勤方法によって異なります。

通勤方法 非課税限度額(月額) 注意点
公共交通機関 15万円まで 最も経済的かつ合理的な経路の運賃が対象
マイカー・バイク通勤 距離に応じて4,200円〜31,600円 片道の通勤距離で判定、駐車場代は含まない
公共交通機関+マイカー 合算で15万円まで それぞれの非課税限度額を合算可能

重要なポイントとして、通勤手当を非課税とするためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 実際の通勤に必要な費用として支給されること(実費精算または定期券代相当額)
  • 通勤経路や通勤方法が合理的であること
  • 非課税限度額を超える部分は給与として課税されること
  • 在宅勤務日が多い場合は実態に応じて支給額を調整することが望ましい

なお、通勤手当を一律で定額支給している場合でも、実際の通勤実態と乖離していると税務調査で指摘される可能性があるため、定期的に通勤実態の確認を行うことが推奨されます。

住宅手当

住宅手当は原則として給与扱いとなり、全額が課税対象になります。

所得税・住民税・社会保険料のすべての算定基礎に含まれるため、従業員の税負担が増加します。

ただし、住宅手当ではなく「社宅」として提供する場合は、一定の条件を満たせば非課税または低額の課税で済む場合があります。

提供形態 税務上の扱い メリット
住宅手当(現金支給) 全額課税対象 従業員の住居選択の自由度が高い
社宅(会社契約) 一定の自己負担があれば非課税 従業員・会社双方の税負担を軽減できる
借上社宅 賃料の50%以上を従業員負担すれば残りは非課税 節税効果が高く、福利厚生として効果的

社宅制度を活用する場合、従業員から一定額(通常は賃貸料相当額の50%程度)を徴収することで、会社負担分を福利厚生費として処理でき、従業員側も給与課税されないため、実質的な手取り増加につながります

食事手当

食事手当も原則として給与扱いになりますが、現物支給(社員食堂や食事の提供)の場合は、一定の条件を満たせば非課税となります。

食事提供における課税・非課税の判断基準は以下の通りです。

  • 現金支給の食事手当は全額が給与として課税対象になる
  • 社員食堂や弁当など現物支給の場合、従業員が食事代の50%以上を負担していれば非課税
  • 会社負担額が月額3,500円以下であれば非課税の範囲内
  • 残業時の夜食代は、1食あたり300円以下であれば福利厚生費として処理可能

例えば、社員食堂で500円の食事を提供し、従業員から300円を徴収する場合、会社負担の200円は福利厚生費として非課税になります。

一方、食事手当として月5,000円を現金支給する場合は、全額が給与として課税されます。

このため、食事補助を行う場合は現金支給ではなく、社員食堂や仕出し弁当などの現物給付を検討することが税務上有利になります。

リモートワーク手当

リモートワーク手当は比較的新しい福利厚生の形態ですが、現状では原則として給与扱いになり、課税対象となります。

リモートワーク手当の税務上の扱いと注意点は以下の通りです。

支給形態 税務上の扱い ポイント
一律定額支給 給与として課税 最も簡便だが税負担が発生する
実費精算(領収書提出) 業務に必要な範囲は非課税の可能性 事務負担は増えるが合理的
通信費の按分計算 業務使用割合を合理的に算定すれば非課税 計算根拠の明確化が必要

リモートワーク手当を定額で支給する場合、月額3,000円〜5,000円程度が一般的ですが、これは給与として所得税・社会保険料の対象になります。

一方、通信費や電気代などを実費精算する方法もありますが、業務使用分とプライベート使用分を明確に区分する必要があります。

例えば、通信費の50%を業務使用として会社が負担する場合、その根拠(勤務日数の割合など)を明確にしておくことが重要です。

現金支給じゃなくても満足度を上げるポイント

現金支給じゃなくても満足度を上げるポイント

現金支給は税務上のリスクが高いため、現金以外の方法で従業員満足度を高める福利厚生の導入を検討することが有効です。

①会社契約で従業員にニーズのある福利厚生を導入する

会社が直接契約し、従業員に現物やサービスを提供する形の福利厚生は、適切に設計すれば非課税となるケースが多く、税務上のメリットが大きくなります。

従業員満足度が高い福利厚生の例は以下の通りです。

  • 社員食堂や食事補助(現物給付で従業員負担50%以上)
  • 社宅・借上社宅(従業員から一定の自己負担を徴収)
  • 健康診断・人間ドック(法定を超える項目も福利厚生費として処理可能)
  • スポーツクラブ法人会員(全従業員が利用可能な場合)
  • 資格取得支援(業務に必要な資格の受験料や講座費用)

これらの福利厚生は、全従業員が平等に利用できる仕組みであることが重要です。

特定の部署や役職者のみが利用できる場合は、給与として課税されるリスクが高まります。

また、導入前に従業員アンケートを実施し、実際にニーズの高い福利厚生を選定することで、利用率を高め、投資対効果を最大化できます。

②カフェテリアプランなど、外部の福利厚生サービスを導入する

カフェテリアプランとは、従業員が複数の福利厚生メニューの中から自分のニーズに合ったものを選択できる制度です。

外部の福利厚生サービスを活用することで、多様なメニューを低コストで提供できます。

サービス形態 特徴 税務上の注意点
カフェテリアプラン ポイント制で従業員が自由に選択 ポイント付与は給与扱いになる可能性がある
パッケージ型福利厚生 月額定額で多様なサービスを利用可能 会社が費用負担すれば福利厚生費として処理可能
割引優待サービス 提携施設を割引価格で利用可能 会費を会社負担すれば非課税

カフェテリアプランを導入する際の注意点として、従業員にポイントを付与し、そのポイントで福利厚生メニューを購入する形式の場合、ポイント付与時点で給与として課税される可能性があります

これを避けるためには、会社が直接サービス提供会社に費用を支払い、従業員は利用したいサービスを選択するだけという形式にすることが推奨されます。

この場合、実際に利用したサービスのみが福利厚生として提供されたことになり、税務上の問題が生じにくくなります。

よくある質問

よくある質問

Q. 現金ではなく「商品券」「ギフトカード」「ポイント」なら福利厚生になりますか?

商品券やギフトカード、ポイントなどは現金と同等の価値があるため、原則として給与扱いになり課税対象となります。

ただし、以下のような場合は例外的に福利厚生費として認められる可能性があります。

  • 創立記念や永年勤続表彰などの記念品として、社会通念上相当な金額(5,000円〜10,000円程度)の商品券を贈呈する場合
  • 全従業員に一律で少額(3,000円程度まで)の商品券を配布する場合
  • 業務上の成果に対する報奨金ではなく、純粋な福利目的であることが明確な場合

それでも、商品券やギフトカードは換金性が高いため、税務調査で給与と判定されるリスクは高くなります。

福利厚生として認めてもらうためには、支給目的を明確にし、金額を社会通念上相当な範囲に抑えることが重要です。

Q. 監査や税務調査で指摘されやすいポイントはどこですか?

税務調査で福利厚生費が問題になりやすいポイントは以下の通りです。

  1. 金額が社会通念上相当な範囲を超えている(祝い金が10万円以上など)
  2. 特定の従業員や役員のみが受け取っており、平等性が欠けている
  3. 就業規則や福利厚生規程に支給基準が明記されていない
  4. 支給記録や証明書類が適切に保管されていない
  5. 実質的に労働の対価として支給されているのに福利厚生費として処理している

特に注意が必要なのは、「○○手当」という名称で定期的に支給されているものは、労働の対価と判断されやすいという点です。

また、役員や特定の管理職のみが受け取る福利厚生は、交際費や給与として再分類される可能性が高くなります。

Q. 社宅で従業員が負担している分は非課税対象になりますか?

社宅制度において、従業員から一定額以上の自己負担を徴収している場合、会社負担分は福利厚生費として処理でき、従業員側も給与課税されません。

非課税となるための条件は以下の通りです。

住宅の種類 従業員の最低負担額 計算方法
小規模住宅 賃貸料相当額の50%以上 固定資産税評価額をもとに計算
小規模住宅以外 賃貸料相当額の50%以上または自社所有の場合は固定資産税課税標準額の一定割合 床面積や建物の状況により計算式が異なる
役員の社宅 賃貸料相当額の全額または豪華社宅の場合は時価 役員は一般従業員より厳しい基準が適用される

小規模住宅とは、木造住宅で床面積132平方メートル以下、それ以外の構造で99平方メートル以下の住宅を指します。多くの一般的な賃貸住宅はこの範囲に該当します。

重要なポイントとして、従業員から徴収する金額が賃貸料相当額の50%未満の場合、差額が給与として課税されるため、適切な金額設定が必要です。

Q. 「在宅勤務の通信費」を定額で補助したい場合、どんな設計が無難ですか?

在宅勤務の通信費を定額で補助する場合、現状では給与として課税されるケースが多いため、以下のような設計が税務上のリスクを軽減しやすくなります。

  • 基本は「実費精算(領収書・明細提出)」を原則にし、業務必要性を説明できる形にする
  • 定額にする場合は「上限額(例:月3,000円〜5,000円)」を設定し、用途を通信費・電気代など業務関連に限定する
  • 業務使用割合の算定根拠を用意する(例:勤務日数、業務時間、在宅勤務日数の割合など)
  • 支給対象を在宅勤務者に限定し、支給要件(週○日以上など)を社内規程に明記する
  • 支給方法は「現金一律」よりも「会社契約の回線・モバイルルーター貸与」など現物給付を優先する

特に、「何に対する補助か」「いくらまでか」「なぜその金額か」を説明できる状態にしておくと、税務調査での指摘リスクを下げやすくなります。

一律定額で支給するほど運用は簡単になりますが、その分給与扱いになりやすい点は理解しておく必要があります。

まとめ

まとめ

福利厚生としての現金支給は、原則として給与と判断されやすく、課税や社会保険料の対象になりやすい点が最大の注意点です。

一方で、慶弔見舞金のように目的が明確で、金額が社会通念上妥当かつ運用ルール(規程・証憑・支給記録)が整っていれば、福利厚生費として認められる可能性があります。

迷う場合は、「現金支給にこだわらず、現物給付や会社契約の福利厚生に寄せる」ことで、税務リスクを抑えながら満足度を高めやすくなります。

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