福利厚生

福利厚生は従業員の家族でも使える?対象範囲や運用ルールの決め方を解説

福利厚生は従業員の家族でも使える?対象範囲や運用ルールの決め方を解説
ふくラボ編集部

福利厚生制度を導入する際、従業員の家族も対象にするか悩む企業は少なくありません。

家族まで含めることで従業員満足度は向上しますが、対象範囲や運用ルールが曖昧だと、税務上の問題や不公平感につながる恐れがあります。

福利厚生の家族範囲を適切に設定しないと、給与課税や税務調査のリスクが高まり、制度そのものが機能不全に陥る可能性があります。

この記事では、福利厚生における家族の対象範囲の決め方から、実務で使える運用ルール、社内規程に明記すべきポイントまで、具体的に解説します。

この記事で分かること
  • 福利厚生で従業員の家族が使える制度と使えない制度の違い
  • 家族の定義・扶養条件・同居要件など対象範囲を決める4つの基準
  • 申請フロー・利用上限・不正防止など実務で必要な運用ルールの設計方法
  • 社内規程に明記すべき対象者・利用条件・費用負担の具体的な記載例

【結論】福利厚生は従業員の家族も使える場合がある

【結論】福利厚生は従業員の家族も使える場合がある

福利厚生制度は、従業員本人だけでなく家族も利用できる場合があります。

ただし、すべての福利厚生が家族に適用できるわけではなく、制度の種類や目的によって対象範囲は異なります。

法定福利費に該当する社会保険料や雇用保険料は、配偶者や扶養家族も保障の対象となります。

一方、法定外福利費については、企業が独自に対象範囲を設定できますが、税務上の損金算入や非課税扱いを受けるには、社会通念上妥当な範囲内で全従業員に平等に適用される必要があります。

従業員の家族が使える福利厚生・使えない福利厚生

福利厚生制度を家族に適用する際は、制度の性質によって対象範囲が変わります。

以下の表で、家族が利用できる制度と利用できない制度を整理しました。

制度の種類 家族の利用 主な条件・注意点
健康保険・厚生年金 扶養家族として認定された配偶者・子などが対象
慶弔見舞金 配偶者・子・親などの慶弔事に支給可能
社員旅行・レクリエーション 家族参加可能だが、費用負担方法で課税関係が変わる
健康診断(法定外) 配偶者健診を福利厚生として提供する企業もある
食事補助 × 従業員本人のみが原則(社員食堂など)
通勤手当 × 従業員本人の通勤費用のみ
住宅手当 家族構成で支給額が変わる場合、課税対象になる可能性

家族が利用できる福利厚生でも、全従業員に平等に提供されていない場合や、一部の役職者のみが対象の場合は、給与課税される可能性があります。

税務調査で指摘されないよう、社内規程で明確な基準を設けることが重要です。

対象範囲の決め方は「定義」と「線引き」が9割

対象範囲の決め方は「定義」と「線引き」が9割

福利厚生の家族範囲を適切に設定するには、「誰を家族とするか」という定義と、「どこまでを対象にするか」という線引きが重要です。

曖昧な基準のままでは、従業員間で不公平感が生まれたり、税務上の問題が発生したりします。

対象範囲を決める際は、以下の4つの観点から具体的な基準を設けましょう。

家族の定義をどう置くか

福利厚生における「家族」の定義は、企業が独自に設定できます。

一般的には、配偶者・子・親などの親族を指しますが、どの範囲まで含めるかは明確にする必要があります。

多くの企業では、以下のような基準で家族を定義しています。

  • 配偶者(法律婚に基づく夫または妻)
  • 子(実子・養子・継子を含む)
  • 父母(実父母・養父母を含む)
  • 兄弟姉妹(同居の場合のみ対象とする企業もある)
  • 祖父母・孫(扶養している場合のみ対象とする企業もある)

法律上の親族関係だけでなく、実際の生計を共にしているかも判断基準になります。

社内規程には「民法上の親族関係にある者」または「生計を一にする親族」といった表現で明記すると、解釈の幅を減らせます。

扶養の有無を条件にするか

福利厚生の対象家族を「扶養家族」に限定するかどうかは、重要な判断ポイントです。

扶養の有無を条件にすることで、税務上の整合性が取りやすくなり、証憑書類による確認も容易になります。

扶養を条件にする場合、以下の2つの扶養概念があることに注意が必要です。

扶養の種類 判定基準 確認方法
税法上の扶養 年間所得48万円以下(給与収入103万円以下) 年末調整の扶養控除等申告書
社会保険上の扶養 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満) 健康保険の被扶養者届

どちらの扶養基準を採用するかは、福利厚生の種類によって使い分けることもできます。

たとえば、慶弔見舞金は税法上の扶養を基準に、健康診断補助は社会保険上の扶養を基準にするなど、制度ごとに適切な基準を選択できます。

同居・別居を条件にするか

家族が従業員と同居しているか別居しているかも、対象範囲を決める要素になります。

同居を条件にすることで、実質的に生計を共にしている家族に限定でき、制度の趣旨に沿った運用がしやすくなります。

ただし、同居条件を設ける場合は、以下のような例外的なケースへの対応も考慮が必要です。

  • 単身赴任で別居している配偶者・子
  • 就学のため別居している子
  • 介護施設に入所している親
  • 医療機関に入院中の家族

これらのケースでは、別居していても実質的に扶養関係が継続していると判断できます。

社内規程では「原則として同居を条件とするが、就学・就業・療養その他やむを得ない事由により別居している場合はこの限りでない」といった例外規定を設けると、柔軟な運用が可能になります。

事実婚・同性パートナーの扱い

近年、事実婚や同性パートナーを福利厚生の対象に含める企業が増えています。

多様な家族のあり方を認めることは、従業員の満足度向上や企業イメージの向上につながります。

事実婚・同性パートナーを対象に含める場合、以下のような確認方法を設定する企業が一般的です。

パートナーの種類 確認方法の例
事実婚 住民票(続柄が「妻(未届)」「夫(未届)」)、パートナーシップ宣誓書など
同性パートナー 自治体発行のパートナーシップ証明書、社内パートナーシップ登録制度など

事実婚・同性パートナーを対象に含める場合でも、法律婚の配偶者と同等の要件(同居・生計同一など)を設定し、客観的な証明書類の提出を求めることで、税務上の問題を回避できます。

社内規程には「婚姻関係と同等の関係にあると会社が認めた者」といった表現で明記すると、柔軟な対応が可能になります。

福利厚生の運用ルールの決め方

福利厚生の運用ルールの決め方

対象範囲を定めたら、次は実際の運用ルールを設計します。どれだけ良い制度を作っても、運用が煩雑だと従業員が利用しなくなり、不正利用のリスクも高まります。

運用ルールは、「使いやすさ」と「適正管理」のバランスを取ることが重要です。

以下の3つの観点から、実務で機能するルールを設定しましょう。

申請フローをシンプルにする

福利厚生の申請手続きが複雑すぎると、従業員の利用率が下がります。

一方で、簡略化しすぎると不正利用や管理ミスのリスクが高まります。

適度にシンプルで、かつ必要な確認ができる申請フローを設計しましょう。

効果的な申請フローの設計ポイントは以下の通りです。

  1. 申請書類は1枚にまとめる(申請書・証憑添付・承認欄を一体化)
  2. オンライン申請システムを活用し、紙の書類を削減する
  3. 承認者を1〜2段階に限定し、決裁ルートを短くする
  4. 申請期限を明確にし(例:利用月の翌月末まで)、遅延申請のルールも定める
  5. よくある質問をFAQとしてまとめ、問い合わせ対応の負担を減らす

家族が対象の福利厚生では、家族関係を証明する書類(住民票・健康保険証のコピーなど)の提出を初回のみ求め、2回目以降は省略するといった工夫も有効です。

ただし、家族構成に変更があった場合は速やかに届け出るよう、社内規程で義務付けることが必要です。

利用回数・上限額を決める

福利厚生制度の利用回数や上限額を設定しないと、一部の従業員だけが過度に利用し、制度の公平性が損なわれる可能性があります。

また、会社の費用負担が想定以上に膨らむリスクもあります。

利用制限を設ける際の基準例を以下に示します。

福利厚生の種類 利用回数・上限の例
慶弔見舞金 結婚祝金:従業員1回限り、子の結婚:1人につき1回
健康診断補助(配偶者) 年1回、上限1万円まで
レクリエーション費用 年間1人あたり3万円まで(家族含む)
育児・介護支援 年間10万円まで、利用回数制限なし

上限額を設定する際は、社会通念上妥当な範囲内に収めることが、税務上の損金算入や非課税扱いを受けるための重要なポイントです。

過去の税務調査事例や同業他社の水準も参考にしながら、適切な金額を設定しましょう。

不正利用を防ぐ仕組みを入れる

福利厚生制度の不正利用を防ぐには、事前のルール設計と事後の確認体制の両方が必要です。

特に家族が対象の制度では、家族関係の虚偽申告や重複申請などのリスクがあります。

不正利用を防ぐための具体的な対策は以下の通りです。

  • 家族関係の証明書類(住民票・健康保険証など)を定期的に確認する
  • 利用実績をデータベース化し、異常な利用パターンを検知できるようにする
  • 領収書・請求書などの証憑書類の提出を必須とし、原本確認を行う
  • 不正利用が発覚した場合の処分(支給取り消し・懲戒処分など)を社内規程に明記する
  • 内部監査や抜き打ちチェックを定期的に実施する

不正防止のルールは厳格にしすぎると従業員の利用意欲を削ぐため、「性善説を基本としつつ、最低限の確認は行う」というバランスが重要です。

また、不正利用の事例が発生した場合は、再発防止策を速やかに社内規程に反映させることも必要です。

規程に書くべきポイント

規程に書くべきポイント

福利厚生制度を適切に運用するには、社内規程への明記が不可欠です。

規程が曖昧だと、従業員間で解釈が分かれたり、税務調査で指摘を受けたりするリスクがあります。

社内規程には、以下の4つのポイントを必ず記載しましょう。

対象者と対象家族の範囲

福利厚生制度の対象となる従業員と家族の範囲を、具体的に定義します。

曖昧な表現を避け、誰が見ても同じ解釈ができるように記載することが重要です。

規程に記載すべき内容の例は以下の通りです。

  • 対象従業員:正社員・契約社員・パートタイマーなど雇用形態ごとの適用可否
  • 対象家族の定義:配偶者(法律婚・事実婚・同性パートナーの扱い)、子、父母、その他の親族の範囲
  • 扶養条件:税法上の扶養または社会保険上の扶養のいずれを基準とするか
  • 同居条件:同居を必須とするか、別居でも認めるか(例外事由の明記)
  • 年齢制限:子の場合は「18歳到達後の最初の3月31日まで」など具体的に記載

個人事業主の専従者や役員の家族など、特殊なケースの扱いも明記しておくと、トラブルを防げます。

利用条件

福利厚生を利用するための条件を明確に定めます。

利用条件が曖昧だと、従業員によって解釈が異なり、不公平感や不正利用につながります。

規程に記載すべき利用条件の例を以下に示します。

条件の種類 記載例
勤続年数 入社後3ヶ月経過した従業員から利用可能
申請期限 利用日から30日以内に申請すること
利用回数 同一事由につき年1回まで
併用制限 他の福利厚生制度との併用は不可
必要書類 領収書原本・家族関係証明書の提出必須

また、退職予定者や休職中の従業員の扱いについても明記しておくと、トラブルを未然に防げます。

たとえば「退職日の1ヶ月前以降の申請は認めない」「休職期間中は利用を停止する」といった規定を設けることが考えられます。

費用負担

福利厚生にかかる費用を会社と従業員でどう負担するかを明確にします。

費用負担の割合によって、税務上の取り扱いが変わるため、慎重に設定する必要があります。

費用負担の設定パターンは以下の通りです。

  • 全額会社負担:慶弔見舞金、法定健康診断など
  • 一部会社負担:社員旅行(家族参加費の一部)、配偶者健診(上限額まで)など
  • 全額従業員負担:福利厚生施設の利用料(会社は場の提供のみ)など

特に家族が参加するレクリエーションや社員旅行では、会社負担が過大だと給与課税されるリスクがあるため、社会通念上妥当な範囲内に収めることが重要です。

一般的には、従業員本人の費用は会社が負担し、家族分は従業員の一部負担とするケースが多く見られます。

また、費用の支払方法(現金支給・現物支給・立替精算など)や、勘定科目(法定福利費・法定外福利費・交際費など)の会計処理方法も、経理部門と連携して規程に明記しておくと、経費計上や税務処理がスムーズになります。

変更・例外時の取り扱い

福利厚生制度の運用中には、規程に明記されていないケースや、社会情勢の変化による制度変更が必要になることがあります。

こうした変更や例外対応のルールを事前に定めておくことで、柔軟かつ公平な運用が可能になります。

規程に記載すべき変更・例外対応の内容は以下の通りです。

  1. 制度の改廃権限:取締役会・代表取締役・人事部長など、誰が制度変更を決定できるか
  2. 変更時の周知方法:社内通知・説明会・イントラネット掲載など、従業員への告知手段
  3. 不利益変更の扱い:従業員に不利益となる変更を行う場合の同意取得や経過措置
  4. 例外承認のプロセス:規程に該当しないケースを個別に判断する際の承認者と手続き
  5. 規程の見直し時期:年1回など、定期的に制度を見直すタイミングの設定

特に家族の範囲や扶養条件については、法改正や社会情勢の変化に応じて見直しが必要になる場合があります。

「本規程は、法令改正その他の事情により、必要に応じて変更することがある」といった包括的な変更条項を設けておくと、柔軟な対応が可能になります。

まとめ

まとめ

福利厚生を従業員の家族にも適用するには、対象範囲の明確な定義と、実務で機能する運用ルールの設計が不可欠です。

曖昧な基準のままでは、税務リスクや従業員間の不公平感につながります。

福利厚生制度は、従業員満足度を高め、優秀な人材を確保するための重要な施策です。

家族も含めた制度設計により、従業員のワークライフバランス支援や定着率向上につながります。

自社の実情に合わせて、適切な対象範囲と運用ルールを設定しましょう。

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