福利厚生

人間ドックの補助を福利厚生で導入する方法|非課税の条件と制度の作り方

ふくラボ編集部

従業員の健康を守るために、人間ドックの費用を会社で負担したい。

ただ、福利厚生費にできるのか、金額や対象をどう決めればよいのか分からない、という担当者も多いでしょう。

人間ドックの補助は、一定の年齢以上の希望者全員を対象にするなどの条件を満たせば、福利厚生として導入できます。

この記事では、福利厚生費にする条件、協会けんぽや健保組合の補助との組み合わせ方、補助制度の作り方を解説します。

この記事で分かること

  • 人間ドックの費用を福利厚生費にする条件(国税庁の事例)
  • 協会けんぽ・健保組合の補助と組み合わせる方法
  • 補助制度の作り方と、導入するときの注意点

人間ドックの補助は福利厚生として導入できる

人間ドックは、法律で会社に義務づけられた健康診断(法定健診)ではありません。

そのため、費用を出すかどうか、どこまで出すかは企業が決められます。

定期健康診断との違い

定期健康診断は、労働安全衛生法で会社に実施が義務づけられており、費用は会社の負担です。

人間ドックは、定期健康診断よりも検査項目が多く、がんなどの病気を詳しく調べられる健診です。

定期健康診断と人間ドックの違い

定期健康診断会社の実施義務あり費用会社が負担受ける人対象者全員検査法律で決まった項目
人間ドック会社の実施義務なし費用補助は会社が決める受ける人本人の希望検査がんなどを詳しく

会社が人間ドックを補助すると、福利厚生の制度になります。

検査の内容や費用の違いは、定期健診と人間ドックで何が違うかで解説しています。

会社が人間ドックを補助する目的

会社が費用を出す目的は、主に次の3つです。

  • 病気を早く見つけ、休職や離職を防ぐ
  • 健康に配慮する会社として、採用や定着につなげる
  • 健康経営の取り組みの1つとして位置づける

目的をはっきりさせておくと、対象の年齢や金額を決めやすくなります。

人間ドックの費用を福利厚生費にする条件

会社が費用を負担しても、要件を満たせば、受けた人の給与として課税されません。

国税庁が示している条件

国税庁の質疑応答事例では、次の場合は給与として課税する必要がないとされています。

福利厚生費になる場合、課税されるおそれがある場合

給与として課税されない一定の年齢以上の希望者は全員が受けられる受けた人の全員を対象に会社が負担一般的な人間ドック程度の内容
課税されるおそれがある役員や特定の地位にある人だけが対象受診に関係なく現金を配る一般的な範囲を超える内容

左は国税庁の質疑応答事例の内容。右の2つ目・3つ目は実務上の注意点

一方、役員や特定の地位にある人だけを対象にすると、課税の問題が生じるとされています。

出典:人間ドックの費用負担|国税庁

実務で気をつけたいこと

費用は、会社から医療機関に直接支払うか、領収書と引き換えに精算する形にします。

受診したかどうかに関係なく現金を配ると、給与と同じ扱いになりやすいためです。

対象や補助額は、社内規程に書いておきましょう。

要件を満たす場合は、福利厚生費として経費計上します。

要件を満たさない場合は、受けた人への給与として扱い、源泉徴収が必要になります。

勘定科目と仕訳は、人間ドックの費用を福利厚生費で処理するときの仕訳で解説しています。

協会けんぽ・健保組合の補助と組み合わせる

費用は、会社だけで負担する必要はありません。

加入している健康保険の制度を先に活用し、残りを会社が負担すると、少ない費用で制度を作れます。

協会けんぽは2026年度から人間ドックを補助

協会けんぽでは、これまで35歳以上の被保険者向けに生活習慣病予防健診の費用を補助してきました。

2026年度からは、人間ドック健診も補助の対象になりました。

  • 対象は35歳から74歳の被保険者
  • 補助は最大25,000円
  • 生活習慣病予防健診か人間ドック健診のどちらか1つを、年度に1回

総額が35,000円の人間ドックなら、協会けんぽの補助を除いた自己負担は10,000円です。

会社が残りの一部や全額を出せば、従業員の負担はさらに軽くなります。

補助を組み合わせた場合の負担(例)

人間ドックの総額 35,000円

協会けんぽ最大25,000円会社5,000円本人5,000円

会社の補助額は例。協会けんぽの補助は35〜74歳の被保険者が対象

出典:健診のご案内(兵庫支部)|全国健康保険協会

補助を受けられる健診機関や、自己負担の額は都道府県の支部ごとに異なります。

健保組合の補助を確認する

健康保険組合に加入している会社は、組合が独自の助成を設けていることがあります。

補助額や対象の年齢は組合によって違うため、制度を作る前に確認しておきましょう。

人間ドックで定期健康診断を兼ねる

ドックの検査に定期健康診断の項目が含まれていれば、結果を会社に出してもらうことで、定期健康診断を受けたことになります。

労働安全衛生法で、会社が指定した以外の医師の健診でも、結果を提出すればよいとされているためです。

同じ年に2つの健診を受ける必要がなくなり、本人の時間と会社の費用を減らせます。

人間ドックの補助制度の作り方

補助制度は、次の5つの手順で作ります。

補助制度は5つの手順で作る

STEP 1対象者を決める年齢で区切るなら、その年齢以上の希望者は全員
STEP 2補助額と回数を決める定額・定率・全額から選ぶ
STEP 3検査の範囲を決めるオプションを含めるか
STEP 4申請と支払いの流れを決める契約先で受けるか、精算するか
STEP 5規程に書いて知らせる対象・補助額・結果の扱い

対象者を決める

多いのは、35歳以上や40歳以上など、病気のリスクが上がる年齢で区切る方法です。

年齢で区切る場合も、その年齢以上の希望者は全員が使えるようにします。

パートや契約社員を対象にするかも、ここで決めておきましょう。

補助額と回数を決める

補助額の決め方には、主に3つの型があります。

補助額の決め方は3つの型

型1上限つきの定額1回につき決まった額まで補助。予算を読みやすい
型2定率費用の一定の割合を補助。コースを選べるようにしたい会社に
型3全額決めたコースを全額負担。受診率を最優先したい会社に

回数は、年度に1回とするのが一般的です。

補助の対象にする検査の範囲を決める

人間ドックには、脳ドックやがんの検査など、追加で選べるオプションがあります。

基本のコースだけを補助するのか、オプションも含めるのかを決めておきましょう。

内容が一般的な範囲を超えると、福利厚生費にできない場合があるので注意が必要です。

申請と支払いの流れを決める

会社が契約した健診機関で受ける方法と、本人が選んだ健診機関で受けて精算する方法があります。

契約した健診機関なら、会社がまとめて支払えるため、精算の手間が減ります。

本人が選ぶ方法は自由度が高い反面、領収書の確認や精算の作業が増えます。

社内規程に書いて知らせる

決めた内容は、社内規程にまとめて従業員に知らせます。

規程には、対象者、会社が負担する金額と回数、対象の検査、申請の方法、結果の扱いを書いておきます。

規程があると、税務調査で福利厚生費であることを説明しやすくなります。

制度を使う人が少ない場合は、案内の時期や申請の手間を見直しましょう。

人間ドックの補助を導入するときの注意点

役員だけを対象にしない

役員や管理職だけを対象にすると、福利厚生費ではなく給与や役員報酬として扱われるおそれがあります。

税金の線引きは、福利厚生が課税されるか非課税かの分かれ目もあわせて確認してください。

結果の扱いを決めておく

ドックの結果は、本人の健康に関わる重要な個人情報です。

会社が受け取るのは定期健康診断にあたる項目に限るなど、範囲を決めて本人に伝えましょう。

がんの検査などの結果まで会社が求めると、従業員が受診をためらう原因になります。

事務の負担を見込んでおく

ドックは予約が取りにくく、健診機関との日程の調整に時間がかかります。

希望者の受付、予約、精算、結果の受け取りまで、担当者の作業は増えます。

予約や結果の管理を外部に任せる方法も、あわせて検討しておくと安心です。

任せられる範囲は、健診の予約や結果の受け取りを任せられるサービスで解説しています。

どこでもクリニックの健診予約代行

どこでもクリニックは、健診の予約代行と結果の管理をまとめて提供しています。

希望アンケートの回収から、医療機関の予約、確定の連絡、受診のリマインドまで任せられます。

健診の結果はデータにして一元管理でき、従業員とその家族が使える健康相談などの福利厚生もあわせて導入できます。

人間ドックの補助でよくある質問

パートやアルバイトも対象にすべきですか

決まりはありませんが、同じ条件で働く人を除くと不公平感が生まれます。

対象にしない場合は、その理由を説明できるようにしておきましょう。

予算はどう見積もればよいですか

対象の年齢に当たる従業員の数に、受ける人の割合の見込みと、1人あたりの会社の負担額を掛けて見積もります。

初年度は受ける人の割合が読みにくいため、上限つきの定額で始め、実績を見て金額を見直す方法もあります。

健保の制度で本人の負担がどこまで下がるかを先に確かめておくと、会社が出す金額を決めやすくなります。

35歳未満の人は補助できませんか

対象の年齢は会社が決められます。

ただし、協会けんぽの制度は35歳以上が対象のため、35歳未満は会社の負担が大きくなります。

人間ドックの費用は医療費控除の対象になりますか

原則として対象になりませんが、検査で重い病気が見つかり、治療を始めた場合は対象になることがあります。

詳しくは、人間ドックの費用が医療費控除になるケースをご覧ください。

まとめ

人間ドックの補助は、一定の年齢以上の希望者全員を対象にするなどの条件を満たせば、福利厚生費として導入できます。

協会けんぽや健保組合の制度を先に使い、残りを会社が負担すると、少ない費用で制度を作れます。

対象者、金額、検査の範囲、精算の流れを社内規程に書き、予約や結果の管理の負担も見込んだうえで導入しましょう。

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