福利厚生の意味は?法定と任意の区別・自社に合う制度探しのポイントを紹介
この記事では、福利厚生の意味や目的から、法定福利厚生と任意福利厚生の違い、自社に合う制度の選び方まで、企業が福利厚生を導入する際に押さえておくべきポイントを詳しく解説します。
福利厚生の意味って何?基本の定義と目的

福利厚生とは、企業が従業員とその家族の生活を豊かにするために給与以外に提供する制度やサービスの総称です。
給与は労働の対価として支払われるものですが、福利厚生は従業員の生活の質を向上させ、働きやすい環境を整えることで、企業の採用力や従業員満足度を高める役割を担っています。
福利厚生は給与とどう違う?
福利厚生と給与の最大の違いは、労働の対価かどうかという点にあります。
給与は従業員が提供した労働に対して支払われる金銭ですが、福利厚生は従業員の生活をサポートし、働きやすい環境を整えるための制度です。
たとえば、通勤手当や住宅手当は給与明細に記載されることもありますが、これらは福利厚生に分類されます。
また、社員食堂や健康診断、育児休業制度なども福利厚生の一部です。
福利厚生は給与と異なり、従業員が直接受け取る金額だけでなく、企業が提供するサービスや環境そのものに価値があります。
そのため、福利厚生費として経費計上でき、節税効果が期待できる点も企業にとってのメリットです。
企業が福利厚生を用意する目的は?
企業が福利厚生を整える目的は、大きく分けて三つあります。
一つ目は従業員満足度の向上です。
働きやすい環境を整えることで、従業員のモチベーションが高まり、生産性向上につながります。
二つ目は人材確保と離職率の低減です。
充実した福利厚生は求職者にとって魅力的な要素であり、採用力を高める効果があります。
また、既存の従業員にとっても長く働きたいと思える環境が整うため、離職率の改善が期待できます。
三つ目は企業のブランドイメージ向上です。
従業員を大切にする企業として社会的な評価が高まり、優秀な人材が集まりやすくなります。
福利厚生は単なるコストではなく、企業の成長を支える投資と言えるでしょう。
法定福利厚生と任意福利厚生の違い

福利厚生は大きく「法定福利厚生」と「任意福利厚生(法定外福利厚生)」の二つに分けられます。
この区別を理解することで、企業が必ず実施すべき制度と、自社の状況に応じて選択できる制度を明確に把握できます。
法定福利厚生は企業に義務がある?
法定福利厚生とは、法律によって企業に実施が義務付けられている福利厚生を指します。
具体的には、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険(40歳以上)の五つの社会保険が該当します。
これらは従業員の生活を守る最低限のセーフティネットとして位置づけられており、企業は従業員を雇用する際に必ず加入手続きを行う必要があります。
保険料は企業と従業員が一定の割合で負担し、労災保険のみ企業が全額負担します。
法定福利厚生は企業の規模や業種を問わず義務となるため、まずはこれらの制度を適切に運用することが福利厚生の基盤となります。
任意福利厚生は自由に決められる?
任意福利厚生(法定外福利厚生)は、企業が独自に設計・提供できる福利厚生です。
法律による義務はないため、企業の方針や従業員のニーズに応じて自由に内容を決められます。
代表的なものとして、住宅手当、通勤手当、退職金制度、社員食堂、健康診断の拡充(人間ドックなど)、育児・介護支援、自己啓発支援、レジャー施設の利用補助などがあります。
任意福利厚生は企業の個性を表現できる部分であり、他社との差別化を図る重要な要素です。
ただし、導入後は一定の継続性が求められるため、予算や運用体制を考慮して慎重に選ぶ必要があります。
福利厚生の種類一覧表|うちの会社に必要なのはどれ?

任意福利厚生にはさまざまな種類があり、企業の規模や業種、従業員の年齢層によって最適な制度は異なります。
ここでは代表的な福利厚生を三つのカテゴリーに分けて紹介します。
住宅・生活支援系の福利厚生
住宅・生活支援系の福利厚生は、従業員の日常生活を経済的にサポートする制度です。
特に若手社員や転勤が多い企業では重視される傾向があります。
| 制度名 | 内容 | メリット |
|---|---|---|
| 住宅手当 | 家賃の一部を企業が補助 | 生活費の負担軽減、採用力向上 |
| 社宅・寮 | 企業が住居を提供 | 住居費の大幅削減、転勤時の負担軽減 |
| 通勤手当 | 通勤費用を全額または一部支給 | 通勤負担の軽減、定着率向上 |
| 財形貯蓄 | 給与天引きで貯蓄をサポート | 従業員の資産形成支援 |
住宅手当や通勤手当は多くの企業で導入されており、従業員の生活安定に直結する福利厚生として高い満足度を得られます。
健康・育児支援系の福利厚生
健康・育児支援系の福利厚生は、従業員の心身の健康と仕事と家庭の両立をサポートする制度です。
近年、ワークライフバランスへの関心が高まる中で、重要性が増しています。
| 制度名 | 内容 | メリット |
|---|---|---|
| 健康診断の拡充 | 人間ドックやがん検診の補助 | 早期発見・予防、従業員の安心感 |
| 育児休業の拡充 | 法定以上の休業期間や手当 | 子育て世代の定着率向上 |
| 介護支援 | 介護休業や短時間勤務制度 | 介護離職の防止 |
| フレックスタイム | 柔軟な勤務時間設定 | ワークライフバランスの実現 |
| テレワーク制度 | 在宅勤務やリモートワーク | 通勤負担軽減、多様な働き方の実現 |
特に育児休業や介護支援は、優秀な人材の離職を防ぐ効果が高く、長期的な人材確保につながります。
自己啓発・レジャー系の福利厚生
自己啓発・レジャー系の福利厚生は、従業員のスキルアップやリフレッシュを支援する制度です。
従業員のモチベーション向上や生産性向上に寄与します。
| 制度名 | 内容 | メリット |
|---|---|---|
| 資格取得支援 | 受験費用や教材費の補助 | 従業員のスキルアップ、業務品質向上 |
| 研修制度 | 社内外研修の機会提供 | 人材育成、キャリア開発支援 |
| レジャー施設割引 | 宿泊施設やレジャー施設の優待 | リフレッシュ、従業員満足度向上 |
| カフェテリアプラン | ポイント制で自由に選択 | 個々のニーズに対応、満足度向上 |
カフェテリアプランは、従業員が自分に必要な福利厚生を選べる柔軟性の高い制度として注目されています。
自社に合う福利厚生の選び方

福利厚生の種類は多岐にわたるため、自社に最適な制度を選ぶには、従業員のニーズと企業の実情を正確に把握することが重要です。
従業員のニーズをどう把握する?
従業員のニーズを把握する最も効果的な方法は、アンケート調査や面談を実施することです。
年齢層、家族構成、勤務形態などによって求める福利厚生は大きく異なります。
たとえば、若手独身社員は自己啓発支援やレジャー系の福利厚生を、子育て世代は育児支援や住宅手当を、中高年層は健康診断の拡充や退職金制度を重視する傾向があります。
定期的にアンケートを実施し、従業員の声を集めることで、実際に使われる福利厚生を設計できます。また、利用状況のデータ分析も有効です。
予算と優先順位の決め方
福利厚生の導入には予算が必要です。
まずは福利厚生費として年間どの程度の予算を確保できるかを明確にしましょう。
一般的には、従業員一人あたり月額数千円から数万円程度が目安とされています。
予算が限られている場合は、優先順位をつけることが重要です。
従業員のニーズ調査の結果をもとに、最も要望が多い制度から導入していきます。また、導入コストだけでなく、運用負担や継続可能性も考慮する必要があります。
小規模企業の場合は、外部の福利厚生サービスを活用することで、少ない予算でも多様な制度を提供できる可能性があります。
福利厚生を導入する前に確認すべきこと

福利厚生を導入する際は、事前に導入コストや運用体制を十分に検討することが成功の鍵となります。
導入コストと運用負担の見積もり
福利厚生の導入には、初期費用と継続的な運用コストの両方が発生します。
たとえば、社員食堂を設置する場合は設備投資や人件費、社宅を用意する場合は物件取得費や維持費が必要です。
また、制度の運用には人事部門の業務負担も伴います。
申請手続きの管理、利用状況の把握、従業員への周知などの業務が増えるため、運用体制を整えられるかどうかも重要な判断基準です。
導入前に、初期費用、年間運用コスト、人的リソースの三つの観点から見積もりを行い、継続可能な制度かどうかを慎重に判断しましょう。
外部サービスと自社運営、どちらを選ぶ?
福利厚生を提供する方法には、自社で制度を設計・運営する方法と、外部の福利厚生サービスを利用する方法があります。それぞれにメリットとデメリットがあります。
自社運営のメリットは、企業の実情に合わせた柔軟な制度設計ができることです。
一方で、運用負担が大きく、専門知識が必要になる場合があります。
外部サービスのメリットは、少ない予算と人的リソースで多様な福利厚生を提供できることです。
カフェテリアプランや福利厚生代行サービスを活用すれば、運用負担を大幅に軽減できます。
ただし、自社独自の制度に比べて個性が出にくい面もあります。
企業の規模や予算、運用体制に応じて、最適な方法を選択しましょう。
導入後に従業員に使ってもらえない時は?

せっかく福利厚生を導入しても、従業員に利用されなければ意味がありません。
利用率が低い場合は、原因を分析して改善策を講じる必要があります。
周知が不足していないか確認する
福利厚生の利用率が低い最大の理由は、従業員が制度の存在や内容を知らないことです。
導入時に一度説明しただけでは、時間が経つと忘れられてしまいます。
定期的に社内報やメール、掲示板などで福利厚生の内容を周知しましょう。
特に新入社員には入社時のオリエンテーションで詳しく説明することが重要です。
また、利用方法が複雑だと敬遠されがちです。申請手続きをできるだけ簡素化し、誰でも気軽に利用できる仕組みを整えることも効果的です。
利用しやすい制度に見直すポイント
周知を徹底しても利用率が上がらない場合は、制度そのものが従業員のニーズに合っていない可能性があります。
たとえば、レジャー施設の割引制度が利用されない場合、従業員が求めているのは別の支援かもしれません。
柔軟に制度を見直し、従業員が本当に必要としている福利厚生に切り替えることも検討しましょう。
また、有給休暇の取得率が低い場合は、制度の問題ではなく職場の雰囲気や業務量が原因の可能性もあります。
福利厚生だけでなく、働きやすい環境づくり全体を見直すことが大切です。
福利厚生でよくある質問と対応

福利厚生の導入や運用に関して、企業からよく寄せられる質問とその対応をまとめました。
- Q. 小規模企業でも福利厚生は必要ですか?
A. 法定福利厚生は企業規模を問わず義務です。任意福利厚生も、採用力や従業員満足度を高めるために有効です。予算が限られている場合は、外部サービスの活用や優先順位をつけた導入を検討しましょう。 - Q. 福利厚生費は経費として認められますか?
A. 一定の条件を満たせば福利厚生費として経費計上できます。全従業員が平等に利用できる制度であることや、社会通念上妥当な金額であることが求められます。詳細は税理士に相談することをおすすめします。 - Q. 退職金制度は必ず導入しなければなりませんか?
A. 退職金制度は任意福利厚生であり、法律上の義務はありません。ただし、就業規則に規定した場合は支払い義務が発生するため、慎重に検討しましょう。 - Q. カフェテリアプランとは何ですか?
A. 従業員に一定のポイントを付与し、複数の福利厚生メニューの中から自由に選んで利用できる制度です。個々のニーズに対応できるため、満足度が高い傾向があります。
まとめ

福利厚生とは、企業が従業員の生活を豊かにし、働きやすい環境を整えるために給与以外に提供する制度やサービスです。
法定福利厚生は企業の義務として必ず実施し、任意福利厚生は従業員のニーズや企業の実情に応じて柔軟に設計できます。
自社に合う福利厚生を選ぶには、従業員のニーズを正確に把握し、予算や運用体制を考慮して優先順位をつけることが重要です。
導入後は定期的に周知を行い、利用状況を分析しながら制度を見直していきましょう。
福利厚生は従業員満足度を高め、採用力や生産性向上につながる重要な投資です。
この記事を参考に、自社に最適な福利厚生を整えて、従業員が長く働きたいと思える環境を築いていきましょう。
