福利厚生の目的とは?メリットと導入前に押さえたい3つのポイントを紹介
「福利厚生の目的」について、何のために導入するのか明確に説明できないと悩んでいませんか。
この記事では、福利厚生の基本的な種類から、企業が導入する3つの目的、メリット・デメリット、導入前に押さえるべきポイントまで具体的に解説します。
読み終えるころには、自社に適した福利厚生の方向性が見えているはずです。
そもそも福利厚生とは?

福利厚生とは、企業が従業員とその家族の生活向上や健康維持のために提供する報酬の一つです。
給与や賞与といった直接的な金銭報酬とは別に、働きやすい環境を整えることで従業員満足度を高める仕組みとして位置づけられます。
福利厚生は大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類に分けられ、それぞれ目的と内容が異なります。
法定福利厚生の種類
法定福利厚生とは、法律で企業に義務付けられている福利厚生です。
すべての企業が従業員に対して提供しなければならず、従業員の基本的な生活保障を目的としています。
| 種類 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 病気やケガの医療費を補助する制度 | 正社員・一定条件を満たすパート等 |
| 厚生年金 | 老齢・障害・死亡時の年金給付制度 | 正社員・一定条件を満たすパート等 |
| 雇用保険 | 失業時の生活保障や再就職支援 | 週20時間以上勤務する従業員 |
| 労災保険 | 業務上の災害による補償制度 | すべての従業員 |
| 介護保険 | 介護が必要になった際の費用補助 | 40歳以上の従業員 |
これらの社会保険は企業と従業員が保険料を分担して負担し、従業員の生活基盤を支える役割を果たします。
法定福利厚生は企業規模や業種に関わらず必須であり、未加入の場合は法令違反となるため注意が必要です。
法定外福利厚生
法定外福利厚生とは、企業が独自に設計・提供する福利厚生です。
法律による義務はありませんが、従業員のワークライフバランス向上や企業イメージ強化を目的として導入されます。
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 住宅関連 | 住宅手当、社宅・寮の提供、家賃補助 |
| 通勤関連 | 通勤手当、交通費全額支給、駐車場提供 |
| 健康・医療 | 健康診断の充実、スポーツジム補助、社員食堂 |
| 育児・介護 | 育児休業の延長、ベビーシッター補助、介護休暇 |
| 自己啓発 | 資格取得支援、研修費用補助、書籍購入補助 |
| 財産形成 | 退職金制度、企業型確定拠出年金、財形貯蓄 |
| 余暇・レジャー | 保養所、レジャー施設割引、慶弔見舞金 |
法定外福利厚生は企業が自由に設計できるため、従業員ニーズに合わせた柔軟な制度設計が可能です。
一般的には、通勤手当や住宅手当といった生活支援型の制度が多く導入されています。
近年では健康経営の観点から、健康増進やメンタルヘルスケアに関する制度も注目されています。
福利厚生の目的とは?企業が導入する3つの理由

企業が福利厚生を導入する目的は、単なる福利提供にとどまりません。
従業員満足度の向上、優秀な人材の確保、企業競争力の強化という3つの明確な目的があります。
従業員の満足度とモチベーション向上
福利厚生の第一の目的は、従業員の満足度とモチベーションを高めることです。
給与以外の形で従業員の生活を支援することで、会社への信頼感や帰属意識が向上します。
- 通勤手当や住宅手当により、生活コストの負担を軽減できる
- 社員食堂や健康診断の充実で、日々の健康管理をサポートできる
- 育児休業や介護休暇の整備で、ライフイベントへの不安を解消できる
- 資格取得支援や研修制度で、キャリア成長への意欲を高められる
特に、従業員のライフステージに合わせた制度を用意することで、長期的な満足度向上につながります。
満足度が高まると、業務へのエンゲージメントも向上し、生産性や業績にも良い影響を与える可能性があります。
優秀な人材の確保と離職率の低減
福利厚生は、採用促進と人材定着の両面で重要な役割を果たします。
新卒採用や中途採用において、求職者が企業を選ぶ際の判断材料として福利厚生の充実度が注目されています。
| 場面 | 福利厚生の効果 |
|---|---|
| 新卒採用 | 同業他社との差別化要素となり、応募者数の増加につながる |
| 中途採用 | 即戦力人材が転職先を選ぶ際の重要な判断基準になる |
| 従業員定着 | 働きやすい環境が整い、離職防止効果が期待できる |
| 復職支援 | 育児や介護との両立支援により、優秀な人材の流出を防げる |
特に人材不足が深刻な業界では、福利厚生の充実が優秀な人材を確保する決定的な要因となる場合があります。
また、従業員が長く働き続けられる環境を整えることで、採用コストや教育コストの削減にもつながります。
企業ブランド力と競争力の強化
福利厚生の充実は、企業イメージの向上と市場での競争力強化に貢献します。
「従業員を大切にする企業」という評価は、求職者だけでなく取引先や顧客からの信頼獲得にもつながります。
- 健康経営に取り組む企業として、社会的評価が高まる
- 働きやすい環境を提供する企業として、採用市場での認知度が向上する
- パートタイム有期雇用労働法への対応など、法令遵守の姿勢を示せる
- 従業員の定着率向上により、サービス品質や顧客対応の安定につながる
近年では、企業の社会的責任(CSR)の一環として福利厚生を位置づける企業も増えています。
福利厚生への投資は、長期的に見れば企業価値を高める戦略的な取り組みと言えます。
福利厚生を導入するメリット

福利厚生を導入することで、企業と従業員の双方に具体的なメリットが生まれます。
ここでは、企業側と従業員側それぞれの視点から、主なメリットを整理します。
| 立場 | メリット | 具体的な効果 |
|---|---|---|
| 企業側 | 節税効果 | 福利厚生費として損金算入でき、法人税の負担を軽減できる |
| 企業側 | 採用力向上 | 求人での訴求力が高まり、応募者の質と量が向上する |
| 企業側 | 離職率低下 | 従業員定着率が上がり、採用・教育コストを削減できる |
| 企業側 | 生産性向上 | 従業員の健康維持や満足度向上により、業務効率が改善される可能性がある |
| 従業員側 | 実質的な収入増 | 給与以外の形で生活支援を受けられ、可処分所得が増える |
| 従業員側 | 生活の安定 | 住宅手当や通勤手当により、固定費の負担が軽減される |
| 従業員側 | 健康維持 | 健康診断やスポーツ施設利用により、心身の健康を保ちやすくなる |
| 従業員側 | キャリア形成 | 研修や資格取得支援により、スキルアップの機会が得られる |
企業にとっては、福利厚生費を経費として計上できるため、給与を増やすよりも税制上有利な場合があります。
ただし、福利厚生として認められるには一定の条件があり、全従業員が公平に利用できる制度であることが求められます。
従業員にとっては、給与として受け取るよりも税負担が少ない形で実質的な収入増を得られる点が大きなメリットです。
また、ワークライフバランスの実現により、仕事と私生活の両立がしやすくなります。
福利厚生を導入するデメリット
福利厚生の導入にはメリットがある一方で、企業が考慮すべきデメリットも存在します。
導入前にこれらの課題を理解し、対策を講じることが重要です。
- 初期導入コストと継続的な運用コストが発生する
- 制度設計や運用に人的リソースと時間が必要になる
- 従業員のニーズと合わない制度は利用率が低く、投資効果が出にくい
- 一度導入した制度を廃止すると、従業員の不満や士気低下を招く可能性がある
- 公平性を保つための管理が複雑になり、事務負担が増える場合がある
特に中小企業では、予算や人員の制約から大企業と同等の福利厚生を提供することが難しい場合があります。
また、制度を導入しても従業員に周知されていなければ、利用されず形骸化してしまうリスクがあります。
| デメリット | 対策例 |
|---|---|
| コスト負担が重い | 段階的導入や外部サービスの活用でコストを抑える |
| 運用の手間が大きい | 福利厚生代行サービスやシステム化で効率化する |
| 利用率が低い | 事前に従業員アンケートを実施し、ニーズを把握する |
| 制度の見直しが困難 | 定期的な効果測定と柔軟な改善体制を整える |
デメリットを最小化するには、自社の規模や予算に合った制度を選び、小規模から始めて効果を検証しながら拡大していくアプローチが有効です。
また、従業員への定期的なヒアリングを通じて、制度の利用状況や満足度を把握し、改善を続けることが重要です。
導入前に押さえたい3つのポイント

福利厚生を効果的に導入するには、計画段階で3つの重要なポイントを押さえる必要があります。
従業員ニーズの把握、予算設定、運用体制の準備を順序立てて進めることで、導入後の失敗を防げます。
ポイント①:従業員ニーズを正確に把握する
福利厚生の導入で最も重要なのは、従業員が本当に必要としている制度を見極めることです。
経営層の思い込みや他社事例だけで決めると、利用されない制度になってしまう可能性があります。
- 匿名アンケートを実施し、年齢層・家族構成・勤務形態別のニーズを収集する
- 少人数のグループインタビューで、アンケートでは見えない具体的な要望を聞き出す
- 既存制度の利用状況を分析し、よく使われる制度と使われない制度を明確にする
- 同業他社や競合企業の福利厚生を調査し、市場水準を把握する
アンケートでは、複数の選択肢から優先順位をつけてもらう形式が有効です。
例えば「住宅手当」「育児支援」「健康増進」「自己啓発」などの項目を提示し、重要度を5段階で評価してもらいます。
年代や家族構成によってニーズが異なるため、属性別に集計して分析することが重要です。
20代独身者は自己啓発や余暇支援を、30〜40代の子育て世代は住宅手当や育児支援を優先する傾向があります。
ポイント②:予算とコストパフォーマンスの設定
福利厚生の予算設定では、初期費用と継続費用の両方を考慮し、費用対効果を見極める必要があります。
無理な予算設定は制度の継続性を損ない、従業員の期待を裏切る結果になりかねません。
| 検討項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 総予算の設定 | 人件費の何%を福利厚生に充てるか、業界平均を参考に決める |
| 優先順位づけ | ニーズ調査の結果をもとに、導入する制度の優先順位を決める |
| 段階的導入 | 一度にすべて導入せず、優先度の高い制度から順次拡大する |
| 外部サービス活用 | 自社運営とアウトソーシングのコストを比較検討する |
| 効果測定の仕組み | 利用率や満足度を定期的に測定し、費用対効果を検証する |
一般的に、福利厚生費は給与総額の10〜15%程度が目安とされますが、業種や企業規模により適正水準は異なります。
初年度は少額から始め、効果を確認しながら段階的に拡充していく方法が、リスクを抑えつつ着実に制度を定着させるアプローチです。
また、福利厚生代行サービスを活用すれば、自社で一から制度を構築するよりも初期コストを抑えられる場合があります。
ポイント③:運用体制と社内周知の準備
制度を導入しても、運用体制が整っていなければ形骸化してしまいます。
誰が管理するのか、どのように周知するのか、問い合わせにどう対応するのかを事前に決めておくことが重要です。
- 福利厚生の担当部署または担当者を明確に決め、責任範囲を定める
- 制度の利用方法や申請手続きをまとめたマニュアルを作成する
- 社内イントラネットやポータルサイトで、いつでも情報を確認できる環境を整える
- 導入時に説明会を開催し、全従業員に制度内容と利用方法を周知する
- 定期的に利用状況をモニタリングし、利用率が低い制度は改善策を検討する
特に重要なのは、従業員が制度の存在を知り、簡単に利用できる仕組みを作ることです。
申請手続きが複雑だと利用率が下がるため、オンライン申請やワンストップ窓口の設置など、利便性を高める工夫が求められます。
また、新入社員や中途入社者に対しては、入社時のオリエンテーションで福利厚生制度を丁寧に説明し、早い段階から活用を促すことが大切です。
運用開始後も、定期的にアンケートを実施して満足度や改善要望を収集し、制度のブラッシュアップを続けることで、長期的に効果を維持できます。
まとめ

福利厚生の目的は、従業員満足度の向上、優秀な人材の確保、企業競争力の強化という3つに集約されます。
法定福利厚生は企業の義務として必ず提供し、法定外福利厚生は従業員ニーズに合わせて戦略的に設計することが重要です。
導入にあたっては、従業員ニーズの正確な把握、適切な予算設定、運用体制の整備という3つのポイントを押さえることで、効果的な福利厚生制度を構築できます。
コストや運用負担というデメリットはありますが、段階的な導入と継続的な改善により、これらの課題は軽減できます。
まずは従業員アンケートを実施し、自社の従業員が何を求めているのかを明確にすることから始めてみてください。
福利厚生は一度導入して終わりではなく、定期的に見直しながら育てていく取り組みです。
