給与と福利厚生の違いは?課税・非課税の判断基準と具体例を紹介!
従業員への支給を経理処理する際、給与として計上すべきか福利厚生費として処理できるか迷うケースが多くあります。
判断を誤ると税務調査で否認され、追徴課税のリスクにつながることもあります。
給与と福利厚生の違いは、課税対象になるかどうかに直結する重要なポイントです。
福利厚生費として認められるには、全従業員対象・妥当な金額・現物支給という3つの要件を満たす必要があります。
この記事では、給与と福利厚生の違いについて解説しています。
給与と福利厚生の基本的な違い

給与と福利厚生の最大の違いは、従業員に対する課税の有無です。
給与として扱われるものは所得税や住民税の課税対象となり、源泉徴収が必要になります。一方、福利厚生費として認められるものは非課税となり、従業員の税負担が発生しません。
給与として扱われるもの
給与として扱われるのは、従業員の労働に対する対価として支給されるものです。
具体的には以下のような支給が給与に該当します。
| 給与の種類 | 内容 |
|---|---|
| 基本給 | 毎月固定で支給される賃金 |
| 賞与・ボーナス | 業績や評価に応じて支給される一時金 |
| 各種手当 | 役職手当、資格手当など個人に対する手当 |
| 残業代 | 時間外労働に対する割増賃金 |
| 現金支給の報奨金 | 成果に対して現金で支給される報酬 |
これらは労働の対価として個人に帰属するため、所得税の課税対象となります。
福利厚生費として扱われるもの
福利厚生費として認められるのは、従業員の福祉向上を目的とした支出です。
税務上の福利厚生費は、法定福利厚生と法定外福利厚生に分けられます。
- 法定福利厚生
→社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)の企業負担分 - 法定外福利厚生
→企業が独自に提供する食事補助、社員旅行、慶弔見舞金、レクリエーション費用など
法定外福利厚生については、一定の要件を満たせば非課税の福利厚生費として計上できます。
企業と従業員それぞれのメリット
給与ではなく福利厚生として提供することで、企業と従業員の双方にメリットがあります。
| 立場 | メリット |
|---|---|
| 企業側 | 社会保険料の負担が増えない、損金算入できる、従業員満足度の向上につながる |
| 従業員側 | 所得税や住民税が課税されない、手取り額が実質的に増える、労働環境が改善される |
たとえば月3万円の給与増額では所得税や社会保険料が天引きされますが、同額相当の福利厚生なら非課税で全額が従業員の利益になります。
ただし、福利厚生として認められるには明確な判断基準があるため、次の章で詳しく確認していきましょう。
課税・非課税を分ける3つの判断基準

福利厚生費として非課税扱いとするためには、3つの要件をすべて満たす必要があります。
これらの要件を一つでも満たさない場合、給与として課税対象になってしまうため注意が必要です。
全従業員が利用できること
福利厚生費として認められる第一の要件は、全従業員が平等に利用できることです。
特定の役職や部署だけを対象にした支給は、給与として扱われます。
- 正社員だけでなく、パートやアルバイトも対象に含める
- 就業規則や社内規程で明確に定めておく
- 利用条件を設ける場合は、客観的で合理的な基準にする(勤続年数など)
ただし、勤続年数や勤務形態に応じた合理的な条件設定は認められる場合があります。
金額が社会通念上妥当であること
支給額や提供する内容が、社会通念上妥当な範囲内である必要があります。
国税庁の通達では、各種福利厚生について具体的な限度額が示されています。
| 福利厚生の種類 | 妥当とされる目安 |
|---|---|
| 食事補助 | 1か月あたり3,500円以下(従業員負担が50%以上) |
| 社員旅行 | 1人あたり10万円程度、4泊5日以内、参加率50%以上 |
| 永年勤続表彰 | 勤続20年以上で5万円程度、30年以上で10万円程度 |
| 慶弔見舞金 | 結婚祝金1〜3万円、弔慰金5〜10万円程度 |
これらの限度額を大幅に超える支給は、超過分が給与として課税される可能性があります。
現金支給ではないこと
福利厚生費として認められるには、原則として現物支給である必要があります。
現金や換金性の高いもの(商品券、ギフトカードなど)を支給すると、給与として扱われます。
- 食事補助は社員食堂や食事券で提供する
- 記念品は現物(時計、カタログギフトなど)で贈呈する
- レクリエーションは施設利用や旅行として実施する
ただし、通勤手当や出張旅費など、業務の性質上現金支給が合理的なものは例外として認められています。
これら3つの要件を満たすことで、福利厚生費として非課税扱いにできます。
福利厚生費として認められる具体例

税務上、福利厚生費として認められる支出には、いくつかの典型的なパターンがあります。
ここでは実務でよく使われる4つのケースを、具体的な要件とともに紹介します。
食事補助・社員食堂
食事補助は、従業員負担が50%以上で、企業負担が月3,500円以下であれば非課税です。
社員食堂の運営費や、仕出し弁当の補助などが該当します。
| 提供方法 | 非課税の条件 |
|---|---|
| 社員食堂 | 従業員が食事代の半額以上を負担し、企業負担が月3,500円以下 |
| 食事券・チケット | 特定の飲食店で使える食事券で、上記条件を満たす場合 |
| 仕出し弁当 | 残業時の夜食として提供し、上記条件を満たす場合 |
従業員負担が50%未満の場合や、企業負担が月3,500円を超える場合は、全額が給与として課税されるため注意が必要です。
慶弔見舞金・記念品
慶弔見舞金や永年勤続の記念品は、社会通念上妥当な金額であれば福利厚生費として認められます。
国税庁の通達では、以下のような基準が示されています。
- 結婚祝金:1〜3万円程度が妥当な範囲
- 出産祝金:1〜2万円程度が妥当な範囲
- 弔慰金:5〜10万円程度(続柄により変動)
- 永年勤続表彰:勤続20年で5万円程度、30年で10万円程度の記念品
永年勤続表彰については、勤続年数が10年以上で、かつ2回目以降は5年以上の間隔を空ける必要があります。
また、記念品は現物支給が原則で、現金や商品券での支給は給与扱いになります。
社員旅行・レクリエーション
社員旅行やレクリエーションは、一定の条件を満たせば福利厚生費として計上できます。
| 要件 | 基準 |
|---|---|
| 旅行期間 | 4泊5日以内(海外旅行の場合は現地滞在日数) |
| 参加割合 | 全従業員の50%以上が参加 |
| 費用 | 1人あたり10万円程度が妥当な範囲 |
| 対象者 | 全従業員に参加機会を与える |
不参加者に現金を支給したり、役員だけの豪華な旅行を実施したりすると、給与として課税されます。
また、取引先との接待を兼ねた旅行は交際費として処理する必要があります。
通勤手当・住宅手当
通勤手当は、一定の限度額まで非課税として認められています。
2026年現在、通勤手当の非課税限度額は月15万円です。
- 公共交通機関利用:実費相当額(月15万円まで)
- マイカー通勤:距離に応じて月4,200円〜31,600円
- 駐車場代:通勤手当に含めて判断(合計で月15万円まで)
一方、住宅手当については扱いが異なります。
現金で支給する家賃補助は給与として課税対象になりますが、社宅として提供する場合は賃貸料相当額を従業員から徴収すれば非課税にできます。
賃貸料相当額は、固定資産税の課税標準額などから計算される金額で、通常は市場家賃の50%程度になることが多いです。
【注意】給与扱いになってしまうケースとは?

福利厚生のつもりで支給しても、要件を満たさなければ給与として課税されてしまいます。
ここでは実務でよくある失敗例を3つのケースで紹介します。
ケース①特定の社員だけが対象の場合
特定の役職や部署の社員だけを対象にした支給は、給与として扱われます。
以下のようなケースが該当します。
- 管理職だけに高額な健康診断を提供する
- 営業部門だけに食事補助を支給する
- 正社員のみを対象に社員旅行を実施する
- 特定の成績優秀者だけに報奨金を現金で支給する
全従業員に平等な機会を提供することが福利厚生の基本です。
上述したように、勤続年数や勤務時間など客観的で合理的な条件を設けることは認められる場合があるため、悩ましい場合は税理士などに相談しましょう。
ケース②現金や換金性の高い支給
現金や商品券など換金性の高いものを支給すると、給与として課税されます。
| 支給方法 | 税務上の扱い |
|---|---|
| 現金での食事補助 | 給与として課税 |
| 商品券・ギフトカード | 給与として課税 |
| 電子マネー・ポイント | 原則として給与扱い |
| 現物支給(食事券、記念品) | 要件を満たせば福利厚生費 |
福利厚生として認められるには、現物支給または特定のサービス提供という形式が必要です。
カタログギフトのように選択肢がある場合でも、換金できないものであれば現物給与として扱われる可能性があります。
ケース③上限額を超えた支給
税務上の限度額を超えた支給は、超過分が給与として課税されます。
具体的な失敗例を見てみましょう。
- 食事補助で企業負担が月5,000円になった場合:全額が給与扱い
- 社員旅行で1人あたり20万円かかった場合:妥当な範囲を超えた分が給与扱い
- 通勤手当で月20万円支給した場合:15万円を超える5万円が給与扱い
- 永年勤続表彰で勤続10年に10万円の記念品:社会通念上の妥当額を超える部分が給与扱い
限度額は国税庁の通達や判例で示されていますが、社会通念上の妥当性も考慮されます。
迷った場合は、税理士や所轄の税務署に事前に確認することをおすすめします。
まとめ

給与と福利厚生の違いは、従業員への課税の有無という点で大きく異なります。
福利厚生費として認められるには、全従業員対象・妥当な金額・現物支給という3つの要件をすべて満たす必要があります。
食事補助や社員旅行、慶弔見舞金、通勤手当などは、要件を満たせば非課税の福利厚生費として計上できます。一方、特定の社員だけを対象にしたり、現金で支給したり、上限額を超えたりすると、給与として課税されてしまいます。
税務調査で否認されないためにも、就業規則や社内規程で福利厚生の基準を明確に定め、適切な会計処理を行うことが重要です。
判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談しながら、従業員満足度の向上と税務リスクの回避を両立させていきましょう。
