福利厚生

福利厚生と社会保険の関係性とは?それぞれの違いや役割・加入要件を解説

福利厚生と社会保険の関係性とは?それぞれの違いや役割・加入要件を解説
ふくラボ編集部

企業の人事担当者や経営者にとって、福利厚生と社会保険の違いを正確に理解することは、従業員満足度の向上とコンプライアンスの確保において重要です。

福利厚生と社会保険は混同されやすいですが、目的や対象者、費用負担の仕組みが大きく異なり、適切な運用には両者の違いを明確に理解する必要があります。

本記事では、福利厚生と社会保険それぞれの定義から、具体的な違い、加入要件、さらには手取りを減らさない福利厚生の活用法まで詳しく解説します。

この記事で分かること
  • 福利厚生の種類(法定福利厚生と法定外福利厚生)と企業にもたらす効果
  • 5つの社会保険制度(健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険)の役割
  • 福利厚生と社会保険の目的・対象者・費用負担・強制力の違い
  • 正社員やパート・アルバイトの社会保険加入要件
  • 手取りを減らさない福利厚生の活用方法

福利厚生とは?種類と目的を整理

福利厚生とは?種類と目的を整理

福利厚生とは、企業が従業員に対して給与以外に提供する報酬や制度の総称です。

従業員の生活の質を向上させ、働きやすい環境を整えることを目的としています。

福利厚生は大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類に分類されます。

法定福利厚生と法定外福利厚生の違い

法定福利厚生と法定外福利厚生は、法的義務の有無によって明確に区別されます。

項目 法定福利厚生 法定外福利厚生
定義 法律で加入が義務付けられている福利厚生 企業が独自に提供する任意の福利厚生
主な内容 健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険 住宅手当、食事補助、レクリエーション、育児支援など
実施義務 あり(適用事業所は必須) なし(企業の裁量)
費用負担 企業と従業員で分担(労災保険は企業全額負担) 企業が決定(全額または一部負担)

法定福利厚生は社会保険制度そのものを指し、適用事業所では加入が法律で義務付けられています

一方、法定外福利厚生は企業が従業員の満足度向上や人材確保のために独自に設計する制度です。

福利厚生が企業にもたらす効果

福利厚生の充実は、企業にとって単なるコストではなく、経営戦略上の重要な投資です。

  • 従業員の定着率向上:働きやすい環境が離職率を低下させます
  • 採用力の強化:求職者にとって魅力的な条件となり、優秀な人材の獲得につながります
  • 生産性の向上:従業員の健康管理や生活支援により、業務効率が改善します
  • 企業イメージの向上:福利厚生の充実は企業の社会的評価を高めます
  • 税制上のメリット:一定の要件を満たす福利厚生費は損金算入が可能です

特に法定外福利厚生は企業の独自性を打ち出せるため、競合他社との差別化要因として機能します。

就業規則に明記することで、制度の透明性と公平性を確保できます。

社会保険とは?5つの制度と役割

社会保険とは?5つの制度と役割

社会保険は、国民の生活を保障するために法律で定められた公的保険制度です。

病気やケガ、失業、老後など、生活上のリスクに備えるセーフティネットとして機能します。

日本の社会保険制度は5つの保険で構成されており、それぞれが異なる役割を担っています。

健康保険

健康保険は、被保険者とその被扶養者が病気やケガをした際の医療費負担を軽減する制度です。会社員や公務員が加入する健康保険と、自営業者などが加入する国民健康保険があります。

主な給付内容は以下の通りです。

  • 療養の給付:医療機関での診療費用の7割を保険が負担(自己負担3割)
  • 傷病手当金:業務外の病気やケガで働けない期間、標準報酬月額の約3分の2を支給
  • 出産手当金:出産のため仕事を休んだ期間の所得保障
  • 高額療養費:医療費が一定額を超えた場合の払い戻し制度

健康保険の保険料は標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を乗じて計算され、企業と従業員が折半で負担します。

扶養制度があり、一定の条件を満たす家族は被扶養者として保険料負担なしで加入できます。

厚生年金保険

厚生年金保険は、老後の生活保障や障害・死亡時の所得保障を目的とした制度です。

国民年金に上乗せされる形で給付されるため、「2階建て」の年金制度と呼ばれます。

主な給付内容は以下の通りです。

  • 老齢厚生年金:原則65歳から受給できる老後の年金
  • 障害厚生年金:病気やケガで障害が残った場合の年金
  • 遺族厚生年金:被保険者が死亡した際に遺族に支給される年金

厚生年金保険の保険料も標準報酬月額と標準賞与額に基づいて計算され、企業と従業員が折半で負担します。給与からの天引きにより納付され、源泉徴収の対象となります。

介護保険

介護保険は、40歳以上の全国民が加入する制度で、介護が必要になった際のサービス費用を支援します。

加入者は年齢によって2つに区分されます。

区分 年齢 保険料徴収方法 給付対象
第1号被保険者 65歳以上 年金から天引き 原因を問わず要介護・要支援認定を受けた場合
第2号被保険者 40歳~64歳 健康保険料と一体で徴収 特定疾病により要介護・要支援認定を受けた場合

会社員の場合、介護保険料は健康保険料と合わせて給与から天引きされ、企業と従業員が折半で負担します。

雇用保険

雇用保険は、失業時の生活保障や雇用の安定、能力開発を目的とした制度です。

適用事業所で働く従業員は原則として加入義務があります。

主な給付内容は以下の通りです。

  • 基本手当(失業手当):失業中の生活費を一定期間支給
  • 育児休業給付金:育児休業中の所得保障
  • 介護休業給付金:介護休業中の所得保障
  • 教育訓練給付金:職業訓練の受講費用を補助
  • 高年齢雇用継続給付:60歳以降の賃金低下を補填

雇用保険料は給与と賞与に保険料率を乗じて計算され、企業と従業員がそれぞれ負担します。

ただし、企業の負担割合が従業員よりも高く設定されています。

労災保険

労災保険(労働者災害補償保険)は、業務中や通勤中の事故・病気に対する補償制度です。

従業員を1人でも雇用する事業所は加入が義務付けられています。

主な給付内容は以下の通りです。

  • 療養補償給付:治療費の全額を補償
  • 休業補償給付:働けない期間の所得保障(給付基礎日額の80%)
  • 障害補償給付:障害が残った場合の一時金または年金
  • 遺族補償給付:死亡時の遺族への補償

労災保険の特徴は、保険料を企業が全額負担する点です。従業員の負担はありません。

保険料率は業種によって異なり、危険度の高い業種ほど高く設定されています。

福利厚生と社会保険の違い

福利厚生と社会保険の違い

福利厚生と社会保険は密接に関連していますが、目的や対象者、費用負担の仕組みなど、複数の観点で明確な違いがあります。

それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。

目的

福利厚生と社会保険は、それぞれ異なる目的を持っています。

項目 福利厚生 社会保険
主な目的 従業員の満足度向上、企業の競争力強化、人材確保・定着 国民の生活保障、社会的リスクへの備え、セーフティネット機能
提供主体 企業が独自に設計・提供 国が法律で制度化
設計の自由度 高い(法定外福利厚生の場合) 低い(法律で内容が規定)

福利厚生は企業の経営戦略の一環として位置づけられ、従業員エンゲージメントの向上や採用競争力の強化を目指します。

一方、社会保険は社会全体のセーフティネットとして、国民の最低限の生活保障を目的としています。

対象者

対象となる従業員の範囲も異なります。

  • 福利厚生
    企業が就業規則などで定めた範囲の従業員が対象。正社員のみ、全従業員、特定の役職など、企業が自由に設定可能
  • 社会保険
    法律で定められた加入条件を満たす従業員は原則として全員が対象。所定労働時間や雇用期間などの客観的基準で判断

社会保険は加入条件が法律で明確に定められているため、企業の裁量で対象者を選別できません。

これに対し、法定外福利厚生は企業が対象範囲を決定できますが、公平性の観点から合理的な基準設定が求められます。

費用負担

費用の負担方法も大きく異なります。

制度 企業負担 従業員負担
健康保険 保険料の50% 保険料の50%
厚生年金保険 保険料の50% 保険料の50%
介護保険 保険料の50% 保険料の50%
雇用保険 保険料の約60% 保険料の約40%
労災保険 保険料の100% なし
法定外福利厚生 企業が決定(全額または一部) 企業が決定(なしまたは一部)

社会保険の保険料は給与から天引きされ、源泉徴収の仕組みで納付されます。

法定外福利厚生は企業が費用負担の方法を自由に設計できますが、福利厚生費として損金算入するには一定の要件を満たす必要があります

加入・実施の強制力

法的な強制力の有無は、両者の最も重要な違いの一つです。

  • 社会保険
    適用事業所では加入が法律で義務付けられ、違反には罰則が適用されます。コンプライアンスの観点から厳格な運用が求められます
  • 法定福利厚生
    社会保険と同義であり、加入義務があります
  • 法定外福利厚生
    実施は企業の任意であり、法的義務はありません。ただし、就業規則に記載した場合は労働条件の一部となり、一方的な変更や廃止は労働契約法上の問題となる可能性があります

適用事業所の要件を満たす事業所は、社会保険の加入手続きを行う法的義務があります。

未加入の場合、年金事務所からの指導や、最悪の場合は刑事罰の対象となります。

社会保険の加入要件

社会保険の加入要件

社会保険の加入要件は、雇用形態や労働時間によって異なります。

適切な加入手続きを行うためには、正確な要件理解が不可欠です。

ここでは、正社員、パート・アルバイト、特殊なケースごとに加入要件を解説します。

正社員は原則加入

正社員は、適用事業所で雇用された時点で社会保険の被保険者となります。

保険の種類 加入要件
健康保険・厚生年金保険 適用事業所に常時使用される70歳未満の従業員
介護保険 健康保険加入者のうち40歳以上65歳未満の従業員
雇用保険 週の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みがある従業員
労災保険 雇用形態を問わず、すべての従業員

適用事業所とは、以下のいずれかに該当する事業所です。

  • 常時5人以上の従業員を使用する個人事業所(一部の業種を除く)
  • すべての法人事業所(従業員数を問わず)
  • 国や地方公共団体の事業所

正社員の場合、これらの要件を満たすため、入社と同時に社会保険の資格取得手続きが必要です。

パート・アルバイトの加入要件

パートやアルバイトの社会保険加入要件は、労働時間や事業所の規模によって異なります。

健康保険・厚生年金保険の加入要件は以下の通りです。

  1. 週の所定労働時間および月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上の場合:原則加入
  2. 上記を満たさない場合でも、以下の5要件をすべて満たす場合は加入義務あり
    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 月額賃金が8.8万円以上
    • 雇用期間が2か月を超える見込み
    • 学生でないこと
    • 従業員数が101人以上の企業(2024年10月からは51人以上)

雇用保険については、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば加入対象となります。

労災保険はすべての従業員が対象となるため、パート・アルバイトも自動的に適用されます

試用期間・短期雇用・学生はどうなる?

特殊な雇用形態における社会保険の取り扱いは、以下の通りです。

ケース 社会保険の取り扱い
試用期間中 原則として加入対象。試用期間も雇用期間に含まれるため、要件を満たせば加入義務あり
2か月以内の短期雇用 原則として適用除外。ただし、契約更新により2か月を超える場合は、その時点で加入
学生(昼間学生) 健康保険・厚生年金保険は原則適用除外。ただし、休学中や夜間学生は加入対象となる場合あり
日雇い労働者 健康保険・厚生年金保険は原則適用除外。雇用保険は日雇労働被保険者として別制度あり

注意点として、試用期間中であっても正社員と同様の労働条件であれば、初日から社会保険の加入手続きが必要です。

また、当初2か月以内の契約でも、契約更新の可能性が高い場合は最初から加入が必要になるケースもあります。

学生アルバイトについては、所定労働時間が週20時間以上で月額賃金8.8万円以上の場合でも、昼間学生であれば健康保険・厚生年金保険の適用除外となります。

ただし、雇用保険は学生でも要件を満たせば加入対象です。

これって社保に入る?福利厚生で「手取りが減る」を防ぐケース別対策

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福利厚生の設計次第で、従業員の手取り額に影響を与える可能性があります。

特に、現金支給と現物支給では社会保険料の算定対象となるかどうかが異なります。

ここでは、代表的な福利厚生について、社会保険料への影響と手取りを減らさない工夫を解説します。

在宅勤務の補助

在宅勤務に関する補助は、支給方法によって社会保険料の算定対象となるかが変わります。

支給方法 社会保険料への影響 注意点
在宅勤務手当(現金支給) 標準報酬月額に含まれる 給与と同様に保険料が増加し、手取りが減る可能性あり
実費精算(通信費・光熱費) 業務使用分の実費であれば算定対象外 業務使用割合を合理的に算定し、証拠書類を保管することが重要
備品の現物支給 業務に必要な備品であれば算定対象外 パソコン、デスク、椅子など業務用として明確に管理する

手取りを減らさないためには、一律の手当支給ではなく、実費精算や現物支給の形式を採用することが効果的です。

ただし、実費精算の場合は業務使用分と私的使用分を明確に区分する必要があります。

例えば、通信費の実費精算では、業務時間の割合や使用状況に基づいて合理的に按分し、領収書などの証拠書類を保管することが求められます。

住宅の支援

住宅関連の福利厚生も、実施方法によって社会保険料への影響が異なります。

  • 住宅手当(現金支給)
    給与の一部として標準報酬月額に含まれ、社会保険料が増加します
  • 社宅・寮の提供
    従業員から一定額の家賃を徴収すれば、現物給与として算定対象外となります
  • 借り上げ社宅
    企業が賃貸契約を結び、従業員から適正な家賃(一般的に賃料の10~20%程度)を徴収すれば、差額は報酬に含まれません

特に借り上げ社宅制度は、手取りを減らさない効果的な方法です。

例えば、月額10万円の住宅手当を支給する代わりに、企業が月額10万円の物件を借り上げて従業員から2万円の家賃を徴収すれば、従業員は実質8万円の住宅補助を受けながら、社会保険料の算定対象となる報酬は増加しません。

ただし、従業員から徴収する家賃が著しく低額の場合は現物給与として報酬に含まれる可能性があるため、適正な金額設定が重要です。

国税庁の基準では、賃貸料相当額の50%以上を徴収することが一つの目安とされています。

食事の支援

食事に関する福利厚生は、提供方法と従業員負担の有無によって取り扱いが変わります。

提供方法 社会保険料への影響 要件
食事手当(現金支給) 標準報酬月額に含まれる 無条件で報酬として扱われる
社員食堂での食事提供 条件を満たせば算定対象外 従業員が食事価額の50%以上を負担し、企業負担が月額3,500円以下
食事券・チケットの支給 条件を満たせば算定対象外 従業員が食事価額の50%以上を負担し、企業負担が月額3,500円以下
食事券・チケットの支給 条件を満たせば算定対象外 従業員が食事価額の50%以上を負担し、企業負担が月額3,500円以下

食事補助で手取りを減らしにくい設計にしたい場合は、現金の「食事手当」ではなく、社員食堂や食事券などの「現物給付」に寄せることが基本になります。

一方で、現物給付でも要件を満たさないと課税・報酬扱いとなる可能性があります。

  • 従業員負担が食事価額の50%未満になっていないか
  • 会社負担が月額3,500円を超えていないか(超える場合は超過分の扱いを要検討)
  • 食事以外に転用できる形(汎用ギフト券等)になっていないか
  • 対象者・運用ルールが曖昧で恣意的になっていないか

特に食事券の運用では、配布基準(出社日数に応じる、利用可能店舗を食事に限定する等)を定め、記録を残すことで説明可能性が高まります。

まとめ

まとめ

福利厚生は企業が設計する制度全般を指し、社会保険は法令で加入が義務付けられたセーフティネットです。

福利厚生を現金で支給すると報酬扱いになりやすく、社会保険料が増えて手取りが減る要因になります。

手取りへの影響を抑えたい場合は、実費精算や現物給付を中心に設計し、規程と証拠書類を整えることが重要です。

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